◇ さて、ここで
「生命保険会社の
先進医療特約に入るべきか」
という問題を検討する。
これは極めて難問であり、
保険のことなので皆さん一人ひとりで
大きく考え方が違う。
ご自身が亡くなったときに
1億円が家族に支払われるように
している方がいる一方で、
死んだら意味なしと死亡保障は少額で、
病気になったときの保障を
手厚くしている方もいる。
したがってここではやはり事実だけを述べ、
基本的にはご自身で決めていただく
以外にはない。
◇ まず、1点目の事実として、
「先進医療が使えるような状況になる
可能性はそれほど高いわけではない」
ということが言える。
◇ 例えば、先ほど挙げた
陽子線・重粒子線の治療で、
先進医療だけしか選択肢になく、
しかも良い適応になるような人は,
がん患者さんの中で
何パーセントぐらいいるだろうか?
この分母を調べることは正確には不可能だが、
参考になる数字として、
1年間でがんと新しく診断される人は
およそ86万人というデータがある。
(国立がん研究センター最新がん統計より)
このうちほとんどの方は
何かしらの治療を受けている。
◇ 一方で、先ほどの上位5つを
合計すると4416件となる。
分母を100万人として、
100万人÷4416=226人 となり、
ざっくり226人に1人が先進医療を
受けているということになる。
もちろん 4416件は、
費用がなく断念した人は入っていないので、
もしかしたらもっと多くの人が
先進医療を受ける適応があるかもしれない。
◇ つまり、がんになった人のうち少なくとも
226人に1人 くらいは
「先進医療を受けるかどうか」を考える。
この数字は、やや大ざっぱな計算ではあるが
参考にはなる。
この頻度をどう考えるか。
これは人によって違う。
◇ また、2点目の事実として、
現在行われているがん治療の先進医療は
ほとんどが重粒子線と陽子線であり、
これらは治療に 約300万円
を要するという点だ。
がんにかかり、
治療をしていく中で仕事を辞めたり
収入が減ったりする人が多い中、
そんな中での 300万円 は
かなりの高額だ。
がんでショックを受けているところで、
お金についても悩まねばならない。
この精神的負担は無視できない。
◇ 先進医療特約は金額自体は
高額ではない(年間1000~5000円ほど)
ものが多い一方で、
あくまで特約というおまけであるため
本体の医療保険に加入せねばならない。
さまざまな疑問がわいてくる。
そこで生命保険会社の商品開発を
やっている方から内情を伺った。
すると、
「特約付きの医療保険料は高くない」
との答えが返ってきた。
ではなぜ特約を付けるだけなら高くないのか。
それは
「がんにかかる確率×先進医療を
受けることができる確率」 が
現時点低いため、
特約分の保険料を
安く設定しているからだそうだ。
◇ また、先進医療を受けることが
できるかどうかは、
地理的な問題もあるとのこと。
つまり、近くにそういう病院があれば
受けやすいし、
遠方であれば先進医療を受けるハードルが
上がるということだ。
今はまだ先進医療を受けられる施設が
少ないため、受ける人も限られているが、
設備が増えて先進医療を受ける人が増えたら、
保険が赤字になる可能性もある。
また、先進医療だけを
保障する保険はほとんどなく、
医療保険やがん保険とセットで
販売されているとのことであった。
ちなみに、一番多く行われている
がんの先進医療の陽子線治療が
受けられるところは国内に18カ所ある。
ということは、今後この数が増えていけば、
利用する患者数が増え、
先進医療特約の保険料は
だんだん上がっていく可能性もある。
こういったことを総合的に考えて、
「先進医療特約」加入するかどうかの
判断しなければならない。
悩ましい問題でもある。 完
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