飛行機は、飛ばす上で複雑になり過ぎた。
もはやパイロットよりも
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の
コンピューターサイエンティストが
必要になっている。
多くの製品に同様の状況が見受けられる。
◇ トランプ米大統領が3月12日に
ツイッターでこうつぶやいたのは、
米ボーイングの最新鋭航空機
「737MAX」 が
相次ぎ墜落した問題に対してだ。
◇ 10日、エチオピアの
首都アディスアベバから
ケニアの首都ナイロビに向かう
エチオピア航空302便が離陸から
約6分後に墜落。
その機材が2017年から各国で運航していた
737MAXで、乗客乗員157人の全員が死亡した。
18年10月にインドネシアで起きた
ライオン航空の墜落事故も同型機だった。
相次ぐ事故に何らかの共通の原因が
あるのでは、と疑われている。
◇ 「737」はボーイングが1960年代から
改良を続けてきた小型機の“ロングセラー”だ。
地方都市を結ぶ路線や、
新興国などで根強い需要がある。
その最新鋭機が、
半年間で2度墜落する異例の事態。
中国や欧州などの各国・地域の航空当局は
事故直後から737MAXの運航停止を決定。
◇ 一方、米連邦航空局(FAA)が
運航停止を決定したのは3月13日だ。
ボーイングは同日、同型機の航空会社への
引き渡しを一時停止すると発表。
事故と引き渡し停止で、
同社の業績への影響が懸念される。
◇ FAAは墜落の原因を特定していないが、
有力なのが737MAXで初めて搭載した
「MCAS(操縦特性向上システム)」
の不具合だ。
このシステムは機体に取り付けた
センサーの情報を基に、
失速しそうな姿勢になると
自動制御して墜落などを防ぐ機能を備えるという。
それが何らかの理由で
正常に動作せず事故につながった、
との見方が航空業界に広がっている。
◇しかもこの問題は、
トランプ大統領が指摘したように、
いちシステムの問題にとどまらない
深刻さを抱えていそうだ。
◇ そもそも民間航空機はメーカーが
機種ごとに、設計段階や製造工程において
安全性に関する厳しい審査基準を
満たす必要がある。
そのうえで航空会社が1機ごとに
検査を受けなければ飛ばせない。
慢性的なパイロット不足などを背景に、
かねてデジタル化による安全性や
信頼性の向上を図ってきた航空業界。
当然、個々の部品の故障や
ソフトウエアの誤動作があっても、
システム全体で補完して安全を
確保するような開発プロセスの
ガイドラインは80年代に定め、
FAAなどの検査の過程にも
組み込まれていた。
◇ ところが近年は
「システムが格段に複雑化する中、
何が安全かを定めて検証する
仕組みづくりが追いつかなくなっている」
と航空機や自動車のソフトウエア開発に
詳しい専門家は指摘する。
◇ 安全性や信頼性をより
高めるはずのシステムを、
人間が時として制御できず事故を
引き起こしてしまう──。
自動車業界で急速に台頭する
自動運転車でも起こりうる、
古くて新しい問題を今回の事故は
浮かび上がらせている。
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