◇ 2018年の連続ドラマで
強烈なインパクトを残したのが
テレビ朝日の『おっさんずラブ』だ。
今年は夏に映画版の公開も予定されており、
ブームはまだ続きそう。
◇ 部下から信頼されている
“理想の上司”でありながら、
主人公の春田(田中圭)に思いを寄せ、
乙女な一面をのぞかせる黒澤武蔵。
春田を「はるたん」と呼び、
手の込んだ弁当を作り、
LINEの語尾に「~だお」と付けるなど、
春田を前にすると乙女っぽさが
あふれてしまう武蔵役が面白い。
◇ すべてのシーンが新鮮で、
圭と、牧役の(林)遣都との
掛け合いと絡みは、
エキサイティングだった。
スタッフもキャストも、いままで、
あまり取り組んだことがない題材であり、
男が男を愛するって、
想像力だけでは補えないところがあり
結果、コミカルになったのではなかろうか。
これが逆にシリアスに仕上がったら、
時期尚早だったかもしれない。
◇ 特に印象に残っているのは、
武蔵の妻・蝶子(大塚寧々)とのシーンだ。
30年一緒にいた蝶子に、
男を好きになったから離婚してほしい
と告げるんですから、当然驚く。
LGBTに対する蔑視とかではなく、
奥さんとしては全く想像していなかったことだ。
そのときに彼女は一旦悲しむし、苦しむが、
武蔵が春田に振られたのを見て、
応援する側に回るという、
そのストーリーがトンビは好きだ。
◇ 脚本を書いた徳尾浩司氏は、
泣かせどころなど、
きっちり押さえるところは押さえている。
叫んだり泣いたり転がったり、
恋のさや当てみたいなのも面白いが、
そこで苦しむ蝶子がいたり、
牧の元彼の武川(眞島秀和)が
密かに闘志を燃やしていたり、
そのへんのあんばいが絶妙だった。
◇ この作品には、いままで触れてこなかった
アンタッチャブルな部分が確かにある。
20年前だったら、差別のような扱いに
なっていたかもしれない。
これを、あくまで恋愛ドラマとして作り、
地上波で放送して、
『こういうのを見たかった』
と反応がきちんと返ってきた。
『評価はもう視聴率だけではない』
と言い切ってもいいくらいの作品だ。
男女の境界線がだんだと曖昧になり、
性別で区分すること自体が
不要な時代になりつつある昨今、
『おっさんずラブ』は、
そんな時代背景を教えてくれるドラマであった。
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