◇ 記録的な猛暑を受け、
全国一律で夏に時間を早める
サマータイムの導入が政府・自民党内で
取り沙汰されている。
2020年東京五輪・パラリンピックの
暑さ対策の1つとして、
大会組織委員会が政府に
提案したのがきっかけだ。
過去も何度か導入案が検討されながら
見送られた歴史がある。
長所と短所の両面があり、
決め手を欠いたためだ。
◇ サマータイムは日照時間の
長い夏の一定期間、
時刻を1~2時間早める制度だ。
緯度が高く、夏と冬で日照時間の差が
大きい地域で採用されることが多く、
欧州や北米を中心に
60を超える国で導入実績がある。
日本も戦後にGHQ(連合国軍総司令部)
の指示で実施され、
わずか4年で廃止された歴史がある。
米国では3月の第2日曜日の
午前2時に時計を1時間進め夏時間にする。
11月の第1日曜日の午前2時に戻す。
◇ 夏の明るい夕~夜を
仕事や娯楽などの活動に使える。
経済的なメリットもある。
省エネや温暖化ガス削減だ。
まず照明をつける時間が減る。
気温が比較的低い朝から活動を始めると
冷房の使用も減る。
夕に余暇が増え
消費拡大になるかもしれない。
◇ では、デメリットは何か。
欧州では生活リズムが変わり
体調に悪影響があると懸念が膨らむ。
社会・経済的なコストもある。
導入は日付や時刻が関わる
すべてのシステムに影響を与えるからだ。
航空機や電車の運行に
障害が生じれば生死につながる。
企業の決済などにも波及し、
システム変更は膨大だ。
行政のシステム改修には
約5年かかると見積もられている。
◇ 今回の導入論の契機は
20年7月下旬に開幕する東京五輪への懸念だ。
欧米メディアが開催時期そのものに疑問を呈し、
さらなる対策が必要だと盛んに報道した。
組織委会長の森喜朗元首相は
「外国からいろんな声が出ている。
何もしないわけにはいかない」
と話す。
開催時期の変更は
「国際オリンピック委員会(IOC)
との契約で難しい」
という。
具体的な議論はこれからだ。
◇ 安倍晋三首相は森氏の要請を受け、
自民党に議論するよう求めた。
「明るい時間帯を余暇に充てれば
活動の幅が広がる」
「システムトラブルが起き、
日常生活や企業活動に悪影響が出る」
賛成、反対の意見はどちらももっともだ。
ただ、やはり長所短所ともにあり、
国民生活に多大な影響がある話だ。
拙速にならないよう十分な議論が必要だ。
◇ 石油ショックを機に1970年代から
浮上した導入論は何度も浮かんでは消えた。
今回の東京五輪が最後のチャンスかもしれない。
過去に議連がまとめた法案は
3度とも提出に至らなかった。
経緯をみると必ずしも反対派が
賛成派を論破したわけではない。
大会組織委員会の森喜朗会長も
「国会で最重要課題とならない」と指摘する。
この機会に一度、国会で議論を深めなければ、
堂々巡りの歴史は報われないと思う。
<今日の名言>
少しだけ達成したいのなら、
少しだけ犠牲にすればいい。
多くを達成したければ、
多くの犠牲を払う必要がある。
高みに到達したければ、
それに見合った犠牲を払わなければならない。
ジェームス・アレン
*犠牲を払わなければ現状は打破できません。
今日一日の人生を大切に!