◇ ミネルバ大学を立ち上げたのは、
教育業界では無名の起業家だ。
だが、その無名の起業家のアイデアは
元大統領候補だった政治家、
ハーバード大学 や ペンシルベニア大学 の
元学長、オバマ元大統領の顧問をはじめ、
既存のトップ・エリート校で教えていた教員、
スタッフたちを突き動かした。
既存トップ大学の改革推進者たちの
圧倒的な支持を得て、
プロジェクトは推進されていった。
◇ 本書は、単なる大学の創立秘話ではない。
誰もが見逃した、新規参入が不可能と
考えられてきた市場に
独自のアプローチで参入を実現し、
閉鎖的だと考えられてきた業界に、
今までアクセスできなかった
ユーザーを導き入れ、
既存市場におけるさまざまな
キーパーソンたちからも高い支持を
獲得したプロジェクトの事業戦略を
解説したものだ。
そして、このプロジェクトの課題と
今後の発展性、日本に対する
示唆についても解説する。
本書は教員や学生はもとより、
学校経営者や企業の人事担当者、
経営企画や新規事業開発、
マーケティング担当者まで
幅広く参考にしていただける
ものだと考えている。
あなたが教員や学生であれば、
最新の情報技術を活用することで
従来は実現が難しかった
「学習効果の高い授業」が
どのように実現されるのか
注目していただきたい。
あなたが学校経営者であれば、
ミネルバ大学と自校の運営方法を比べることで、
参考にできるものはたくさんある。
カリキュラムの設計や教授法、
テクノロジーの活用といった
目に留まりやすいものだけでなく、
意思決定さえすれば数か月後から実施できる、
効果的な運営方法のヒントが得られるだろう。
あなたが学校経営者、
あるいは企業の人事担当者であれば、
なぜ、当初は東京、京都、福岡が
滞在候補地となっていた日本が、
最終的にアジアにおける候補地として選ばれず、
ソウルや台北に決定されたのか、
その背景を知ることで、
グローバルに活躍できる才能ある学生を
獲得するために必要な要素を
見つけるヒントが得られるだろう。
それはまた、なぜマッキンゼー、グーグル、
ゴールドマン・サックスなどが
ミネルバ大学のキャリア・オフィスを支援し、
アルゼンチン教育省などの政府系機関が
プロジェクト学習の機会を
この大学に提供するのかということと
表裏の関係にある問題だ。
さらに、ミネルバ大学が実施している
キャリア育成支援制度は、
そのまま企業人事にも応用できる。
またミネルバ大学で行われている
思考・コミュニケーションスキルの
学習効果の見える化は、
企業内のタレント・マネジメントにも
応用できるヒントが多く隠されている。
そして、あなたが経営企画や新規事業開発、
マーケティングを担当しているのであれば、
現在取り組んでいる課題に対して
新しい視点を見つけるヒントが得られるだろう。
そのヒントは、ミネルバ・プロジェクトが
なぜアイデアだけの段階で、
西海岸でも最も資金を得ることが難しいとされる
ベンチャー・キャピタルから30億円もの支援を
獲得することができたのか、
またわずか4年で43万人以上の
フェイスブックのフォロワーを獲得し、
マサチューセッツ工科大学(MIT)よりも
多い受験者数を得ることができたのか、
といったことに隠されているだろう。
完
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