◇朝鮮戦争の間、多くのアメリカ人の捕虜が、
中国共産党が管理する捕虜収容所にいました。
同盟国北朝鮮が捕虜に暴力的な
罰を好んで使ったのに対し、
中国の捕虜の扱い方は、
北朝鮮とはまったく異なっていました。
中国共産党は残忍に見られることを
避けるために、「寛容主義」と名付けた
方策を採用していたのです。
それは捕虜に対する
計画的かつ洗練された「心理攻撃」でした。
中国で何が起こったのかを
明らかにするために、
戦後アメリカ心理学者たちは、
帰還した捕虜たちに詳しく質問しました。
たとえば、
「あなたはどうして中国人に
脱走計画を密告したのですか?」
「あなたが密告したため、
脱走計画はすぐにばれてしまい、
脱走はほとんど失敗に終わったんですよ」
アメリカの研究者エドガー・シャインの
聞き取り調査によると、
「密告した者には誰でも米を一袋与えられたので、
脱走が実際に起こっても簡単に 連れ戻されて
しまうことが多かった」
と書いています。
実際、中国の収容所にいたすべての
アメリカ人捕虜が、なんらかの形で
敵に協力したといわれています。
◇ 捕虜収容所のプログラムの検討から、
捕虜から望ましい承諾を得るため、
中国人が「コミットメントの一貫性」
という手法をうまく利用していたことが
わかってきました。
肉体的な暴力はほとんど使わないで、
どうしたらそのような捕虜たちから
軍事情報を聞き出し、捕虜仲間の情報を
密告させ、公然と母国を非難させる
ことができたのでしょうか?
中国人の答えは基本的なものでした。
小さいことから始めて、そこから築き上げよ。
◇ では「コミットメントの一貫性」とは
どのような手法でしょうか?
「自分がすでにやったことを一貫していたい、
そして、一貫していると見てもらいたい」
という欲求によるものなのです。
人間は、ひとたび決定を下したり、
ある立場を取ると、そのコミットメントは
一貫した行動を取るように、
個人的にも対人的にも圧力がかかります。
そのような圧力によって、
私たちは「前の決定」を
正当化するように行動します。
考えていることや言っていることと
実際の行動とが一致しない人は、
裏表のある人だとか、
頭がおかしいのではないかと
疑われてしまいます。
一方、それらが一貫している人は、
人格的にも知的にも優れていると
考えられるのが普通です。
一貫性こそ、論理性、合理性、安定性、
そして誠実さの核心をなすものなのです。
研究によると、インタビューに応じる
という最初の小さなコミットメントが、
「骨髄や臓器の提供」といった行動を引き出す
「承諾のきっかけ」となりうるのです。
◇多くの企業もこの方法をよく用いています。
たとえば
営業の社員の場合は、
まず小さなものを買わせることから始めます。
その目的は利益を得ることではありません。
その目的は「コミットメントさせる」
ことにあります。
コミットメントをしてもらえば、
そこから自然ともっと大きな購入に
つながる可能性があるからです。
「小さな注文をとることから始めて、
そこから商品全体へと拡大して
ゆくための道を開く」
というのな考え方が大変重要です。
◇このように小さな要請から始めて、
関連する大きな要請を最終的に
承諾させるというやり方は、
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」
と呼ばれています。
扉に足を突っ込み、徐々に扉を開いていく
そんなイメージです。
行動を含めて一旦コミットメントを
してしまうと、
自己イメージには、二つの面からの
「一貫性圧力」がかかります。
ひとつは
「自己イメージを行動に
合わせようとする圧力」
そしてもうひとつは
「他者が自分に対して抱いているイメージに、
自己イメージを合わせようとする圧力」
この2つの圧力がかかるのです。
相手 に襲いかかるこの得体の知れない
「一貫した圧力」を利用して、
営業やその他の行動につなげていくのです。
相手の頑な心を徐々に開いていく
「テクニック」
あなたもこのテクニックを利用しては
いかがでしょうか?
今日一日の人生を大切に!