◇ 中国の王朝でいえば
明代半ばにかけて、
西ヨーロッパは
激動の時代をくぐり抜けていた。
それに引きかえ中国は、
政治機構にしろ、
経済の運営にしろ、
軍事思想にしろ、
ほとんどの分野をとっても
西洋諸国に見劣りがした。
◇ アヘン戦争で中国が敗れた
根本的な原因は、
中国という国の後進性にあった。
中国の武器も軍隊もその防衛力も、
まるで中世のままだった。
政府も中世の政府で、
知識層を含む民も中世の民だった。
中国は奮戦したが、
それでも敗れた。
それは当然かつ不可避の
結果だった。
◇ 重大な歴史的出来事、
心に深い傷を残す
トラウマなるもの、
過去の栄光の
そのどちらも、
民族などの大規模集団の
特徴を決める重要な要素となる。
その集団が過去に、
損失、敗北、
あるいは、激しい屈辱を
被った場合、
それらの出来事が
心に残すトラウマは、
その集団の
アイデンティティの
一部となり、
集団のメンバーを
より固く結束させることになる。
◇ 大規模集団の
アイデンテイティの仕組みと、
その集団が紛争時に
「どのように振る舞うか」を
理解するには、
その集団が過去に
「どのような栄光」や
「トラウマ」を
選び取ったのか、を
理解することが重要となる。
◇ そうした選民意識とトラウマが
複合した心理構造は、
国民のアイデンティティを
形作る上で、
決定的な役割を
果たしているのである。
特に、中国人の
「選び取られた栄光」を
しつかりと理解しておかなければ、
「選び取られたトラウマ」を
充分に理解することはできない。
◇ 自分たちは選ばれた
民族であるという 選民意識、
それに関する 神話、
そして過去の体験に関する
トラウマという三つの要素は、
社会の中でお互いに
補強し合う関係にあるのである。
つづく
今日一日の人生を大切に!