一己を安くせむとて、
数千の人を損ずるは
不仁の甚だしきなり
◇ 江戸時代の藩にも
リストラの話はあった。
藩でリストラがされる時には
立場の弱い「一代限り」の足軽が
真っ先に狙われた。
そもそも藩の軍陣では
足軽は鉄砲の弾よけでもあった。
足軽が人垣をつくり、
上級武士はその内側で守られる。
尾張藩でもそうであった。
◇ 1 7 0 0年ごろ、
家老たちが倹約のため
リストラを断行した。
しかし、江戸時代の藩主は
幼児から仁の政治を教え込まれている。
このリストラに
藩主徳川吉通が待ったをかけた。
人を壮年の時だけ使い、
年老いて解雇すれば、
生活も難儀する。
老足軽には妻子もいる。
おのれひとりの安泰のため
足軽家族を犠牲にするのは不仁。
冒頭の言葉で戒めた。
◇「身分の上と下とは
敷居の鴨居に同じ、
国家を共に支える。
鴨居は上にありて
その痛み少なくし、
敷居は下に在って働き
よく物にあたること限りなし。
下のものが痛みを受ける
仕組みだから、
上に立つ者がこれを
救わなければならない」
そういって、重臣たちに
足軽200人の解雇撤回を求めた。
◇ この藩主の言葉に
重臣たちも落涙した。
当時の尾張藩には
その余力があった。
しかし、組織の中には
末端扱いされる人がいて、
敷居のように踏みつけにされる
悲しみは、たしかに今もある。
300年前の殿様の叫びが
心に突き刺さる。
<今日の名言>
・リストラで妻より料理うまくなる
・左遷だぞ妻よよろこベクビではない
第24回サラリーマン川柳
*リストラも料理の修行ができると思えば
これまた楽し。