旧典なりといえども、治平(ちへい)久しく、
今に至りては、時勢人情に麒輛(そご)し、
処置の当たらざることあり
◇ 堀勝名 は 江戸中期の人。
細川重肉(しげかた)の臣で
熊本藩宝暦改革を主導した。
この改革は一地方の改革であったが、
日本全士の近代化に大影響を及ぼした。
◇ 堀勝名の司法制度改革は
驚異的!
「刑法」という言葉も
彼の改革で広まった。
江戸時代は町奉行や郡奉行が
仕置きと称し、
奉行所の白洲で
民を裁くのが一般的であった。
ところが堀は、
行政官である奉行が
司法官を兼ねれば公平さを欠き、
仕事も煩雑になると考え、
これを廃止。
「刑法局」という
司法専門の役所をつくり、
裁判を専管させた。
それで熊本藩だけは、
近代国家よろしく
「行政と司法の分離」
を実現していた。
明治維新のはるか
10 0年以上前のことである。
◇ それだけではない。
堀は「刑務所」もつくった。
元来、領主の刑罰は
「死刑」と「追放刑」が主。
盗めば初犯は追放!
再犯は死刑!
これでは追放された者は、
衣食の便を失い、
飢えて再犯に及ぶ。
そこで堀は、
懲役刑の創設を決意した。
受刑者を
午前8時から午後2時まで働かせ、
日当のうち三分の一を即日支給。
残りを藩が貯蓄し、
出所時に更正資金として
与える制度を考えた。
今日、刑務所は当然の存在だが、
当時は熊本藩の発明品に近かった。
◇ 司法は過去に定めたルールを
運用する世界。
ゆえに先例墨守に陥りやすい。
冒頭はそれを戒めた
堀の言葉。
彼はむち打ちの刑を
導入にあたり、
実際に自分の尻を打たせ、
痛みの程度を確かめてから、
打つ回数を定めたという。
我々の旧典に
齟齬はないか?
行動する前に、
立ち止まって考えてみる必要がある。
今日一日の人生を大切に!