◇ そんな中でトンビが注目するのが、
「CLO 」と言う金融商品だ。
これは様々な貸付をまとめた上で、
細分化して投資家に売り出す、
いわゆる証券化商品と呼ばれるものだ。
証券化商品とは、あの悪名高き
リーマン・ショックの元凶ともなった。
その時は、アメリカの住宅ローンを束ねた
(サブプライムローン)
証券化商品(CDO)が金融市場に出回っていた。
そこへ住宅ローンの焦げ付きが
発生したことで、
証券化商品の価格が大幅に値下がりし、
最終的にリーマン・ブラザーズの
破綻と言う形で金融危機もたらした。
◇ CDOとCLOで大きく異なるのは、
裏付けとなる貸付が
分散されているところ。
サブプライムローンでは
住宅ローンだけが対象になっていたが、
CLOはあらゆる業種に分散している。
それによって一部の業種が悪くても
他のところが支えとなり、
大幅な価格下落は起こりにくい。
つまり、リスク分散された
CDOより安全な商品という
ことになっている。
◇ ところが現在のコロナ禍では、
セクター分散というのも
あまり意味をなさなくなっている。
前稿に挙げたように、
あらゆるセクターで危機が
起こっているからだ。
そもそも融資を必要とする業種と言うのは、
リアルな店舗を持っていたり、
量の設備投資を必要とするところが多い。
それらは、好調なIT関連とは異なる、
まさに従来型の業種だ。
緊張の糸が切れた時、
それらの企業がバタバタと
倒産してしまうということも
十分に想定される。
◇ そうなると、2018年の時点で
流通残高が6,600億ドル(約70兆円)に
及ぶ CLO もただでは済まない。
なお、その CLO を最も多く
保有している金融機関が、
日本の農林中央金庫と言われている。
これに対して、
日銀や金融庁は警戒感を示した。
ここが火薬庫となってしまわないことを
祈るばかりだ。
◇ 金融の世界には、
「ブラックスワン」
という考え方がある。
白鳥の中に突然現れる
「黒い白鳥」のことだ。
予期しないところから突然現れる
重大な事象のことをあらわす。
2020年の新型コロナウィルスの蔓延は、
まさに「ブラックスワン」だったと
言うことができる。
誰も予期しない突然の出来事によって、
世界がガラッと一変してしまう。
このようなことが起こるからこそ、
相場の予想というのはあまり意味を持たない。
◇ 2021年の相場がどうなるかはわからない。
しかし、確実に言えることは、
「ひたすら上昇を続ける株価はない」
ということだ。
上がりすぎた株は
どこかで必ず下がるし、
再びどこかから黒鳥が
現れないとも限らない。
そうなったときには株式市場は
大混乱に見舞われる。
しかし、長い目線で見れば、
一時的な混乱を経て長期的には
株価は再び上昇に向かう。
過去もそうだったように。
◇「長期的には楽観しているが、
短期では悲観している」
――孫氏もこのように言っている。
この姿勢こそが、我々にも求められる。
足元は慎重に、長期的には明るい展望を持って
ゆっくりと歩みを進めなければならない。
完
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