◇ 将棋の永世棋聖、米長邦雄氏が
経団連で公演したことがある。
当時若手の羽生善治名人が
将棋界のタイトル七つを
独り占めした頃である。
演題は、
「なぜ、羽生君に勝てないのか」
米長氏は次のように語った。
◇「我々ベテラン棋士は
得意な戦型を忘れられない。
その戦型で勝った記憶が
忘れられない。
その戦型は
もう通用しなくなっているのに」
名だたる企業の経営者が、
むずかしい顔をして
じっと聴き入っていた。
「1強」の秘密を知りたい財界の声に
押されて催された講演会である。
羽生七冠の誕生は
それほどの社会的事件だった。
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