◇ 頼山陽の「日本外史」巻九に、
戦国武将の三好長慶(ながよし)を
語った一説がある。
「長慶老いて病み、
恍惚として人を知らず」(岩波文庫)
人を識別できなかった、と。
有吉佐和子氏の小説
「恍惚の人」の表題は
この記述に想を得たという。
いつの世にも悲しい病である。
◇ 読売歌壇に載った歌がある。
「我が命一日(ひとひ)伸ばすに
妻はいのち一日縮むる老老介護」(阿部長蔵)
高齢者同士の老老介護や遠距離介護では、
それでも目の届かぬときがあろう。
◇ 孝行息子の頼山陽は詩に詠んだ。
「五十の児に七十の母あり
この福、人間、得ること
まさに難(かた)かるべし」
なんと幸せなことか、と。
いまは八十の子に百の母さえ
めずらしくない長寿社会を、
人は生きている。
この先のことを考えると、
長寿が本当の幸せかどうかはわからない。
今日一日の人生を大切に!