◇ もし「定年」がなくなったら、
悠々自適の老後は、
かなわぬ夢になるのだろうか?
中高年から、
まだ「定年」に実感のない若者まで、
まずは、中原圭介氏の著者
『定年消滅時代をどう生きるか』
を読んで欲しい。
これからの時代を楽しく豊かに生きるために、
大変参考になる。
◇ そもそも、なぜ「定年消滅」なのか。
その理由の一つは、
社会保障制度の行き詰まりだ。
すでにご承知のように、
日本の生産年齢人口は減り続けている。
働き手を増やすなどの手を打たなければ、
現行の社会保障制度は維持できなくなる。
◇ また、定年問題に限らず、
日本の雇用環境は転期にある。
「定年消滅時代」とは、
新卒一括採用、終身雇用、
年功序列の日本型雇用制度が崩壊し、
雇用が流動化した時代を意味する。
著者の中原圭介氏は、
政策や企業活動、教育など、
多方面から雇用をめぐる問題について分析。
個人の働き方のスタイルや、
心構えを説いている。
◇ 2019年、経団連の中西宏明会長は、
「終身雇用を前提にすることが限界」
と発言。
日本自動車工業会の豊田章男会長も、
終身雇用を維持する難しさに言及した。
これは、グローバル企業が持つ
強い危機感の表れだ。
現行の終身雇用は、
スキルが通用しなくなった
社員を抱え込むしかなく、
人件費の負担が増す。
年功序列の賃金制度は、
優秀な若手も一律評価のため、
彼らは高額報酬を支払う企業に流れる。
これでは、
世界の競合と同じ土俵に立てない。
早期退職や通年採用の広がりも、
同じ理由によるという。
◇ 本書でとりあげられるのが、
トヨタ自動車の例だ。
2019年度、総合職の採用に占める
中途採用の割合を18年度の
1割から3割に増やし、
中長期的に5割まで引き上げるという。
自動運転やシェアリングといった
潮流に対応するために、即戦力が必要なのだ。
◇ 中途採用が当たり前の世の中に、
我々は、どう対応すればいいのか。
著者は、複数のスキルを
持つことを勧めている。
データ分析やマーケティングなど、
転職で引き合いが強いスキルを身に付け、
更新していくことがポイントだ。
しかし、誰でもできるかというと、
やはり、そこには厳しい現実がある。
つねに自らの市場価値を
高める努力をしていなければ、
働き続けるのは難しいということだ。
◇ 磨くスキルは、
仕事から派生したものや、
趣味と関係のあるものでもいい。
専門分野を磨きながら、
それ以外の幅広い分野にも知見を
広げることが「定年消滅時代」を
生き抜くコツということになる。
趣味や読書に今から意識的に取り組み、
質の高い知識を身に付けける必要がある。
せっかくならば、
楽しく学び、楽しく働き続けたい。
今日一日の人生を大切に!