◇ 中国では、2001年、
「世界貿易機構(WTO)」の
加盟に向けて準備が進められていた。
「WTO」には自由貿易の
厳格なルールが存在しており、
国内産業保護のための
高関税の適用は許されない。
あくまでグローバルな自由貿易の
原則にしたがうことが要求される。
そのような状況で中国が
国際競争力を維持するためには、
安い労働力を提供して
海外企業の生産拠点となると同時に、
競争力のある製品の
生産・開発能力を強化しなければならない。
これを担う人材として政府が注目したのが、
「文化大革命」後にアメリカへと
留学した人々の集団である。
政府は、彼らに高給と
高いポストの保証で帰国を促した。
博士号を取得し、
すでにシリコンバレーでキャリアを
築いていた多くの中国人がこれに応じて、
帰国のラッシュが始まった。
この帰国ラッシュは、
江沢民政権における「文化大革命」で
「下放」された第1世代から始まり、
胡錦濤、習近平の歴代政権で
規模を拡大させながら今なお続いている。
世界ではじめて5ナノの半導体の製造に
成功した世界トップレベルの半導体メーカー、
「AMEC」の創業者も帰国した人材のひとりだ。
◇「AMEC」を創業したのは、
中国の半導体の父と呼ばれ、
ドクター・ジェラルドの
名前で知られるゼーヤオという人物だ。
彼はカリフォルニア大学ロサンゼルス校で
物理化学の博士号を取得後、
半導体製造大手の
「アプライドマテリアルズ社」に
13年間在籍した。
その間、同社の副社長および
エッチング製品事業グループの
ゼネラルマネージャーなどを歴任している。
その後、中国政府の要請に応じて帰国し、
2004年に現在の「AMEC」を設立した。
いま、アメリカの名門大学に留学して
博士号を取得し、
シリコンバレーの大手IT企業で
数年勤務した後、
ベンチャー企業に参加して
会社設立のノウハウを学び、
その後自分のベンチャーを
シリコンバレーで立ち上げるというのが
中国出身エリートの一般的なキャリアコースだ。
こうした人々が政府による
リクルートの対象となっている。
いわゆる 「海亀」
と呼ばれる人材群だ。
「海亀」はアメリカで
博士号を取得した後、
「グーグル」や「アップル」などの
最先端企業で働き、
その後帰国してベンチャーを設立している。
いま中国国内では、帰国組も含め、
500万人を越える修士号・博士号の取得者、
そして研究者がいるとされる。
この数はさらに増加している。
これが中国の実態だ。
アメリカにとって何が問題なのか、
少し見えてきたと思う。
つづく
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