◇ 2019年4月に発表された報告書、
「5Gエコシステム:
国防総省に対するリスクとチャンス」には、
これら過去の報告書を上回る
恐るべき内容が書かれていた。
それは、いま第4次産業革命の
中核的なテクノロジーとして
注目されている次世代の通信規格、
5G に関する内容だ。
周知のように、現行の4GやLTEの
約10倍から20倍の速度で、
大容量のデータを瞬時に送信可能な5Gは、
自動運転車、遠隔治療、工場の自動化、
建設機械の自動運転、ARとVR、
そしてスマート・シティーなどの
基盤となるテクノロジーである。
また、軍事通信の飛躍的な高速化から、
兵士がロボットを遠隔で操作する
新しいタイプの戦闘も可能になるとされている。
この報告書の結論を先取りするなら、
5Gのテクノロジーでは
中国が世界を圧倒的にリードしており、
アメリカは世界の潮流から
取り残されてガラパゴス化するということだ。
これは米国防総省が
潔く負けを認めた報告書だ。
そして、その上で中国の覇権の
実現を少しでも遅らせるために、
中国の発展をブロックする提案を行っている。
◇ 米国防総省が負けを認めた
背景になっているのは、
5Gの規格には2つの異なった
周波数帯があるという事実である。
それは以下の2つだ。
1)「mmWave」――アメリカ
・高周波数帯の5Gの規格。
・24GHzから100GHzのミリ波の
帯域を使用。
・光の性質に近い。
2)「sub-6」――中国
・3GHzから6GHzまでの
低周波数帯を使用した規格。
・ファーウェイがこれを使う
代表的な企業。
◇ 米国防総省の報告書によると、
アメリカが採用した「mmWave」と
中国の「sub-6」には大きな違いがある。
「mmWave」は光に近い性質を持つ。
「sub-6」よりも少し速度は速いものの、
壁や建物があると電波はブロックされてしまい、
遠くまでは飛ばない。
そのため「mmWave」の
5Gのネットワークでは、
多くのアンテナを設置しなければならない。
また「mmWave」のアンテナは
5Gに独自な規格なので、
既存の3Gや4Gのアンテナを
流用することはできない。
まったく新しいアンテナを
設置する必要があるので、
5G導入のコストが高くなる。
◇ 一方、低周波数帯の「sub-6」は
音に近い性質を持つ。
そのため、壁や建物を貫通するので、
電波は「mmWave」よりも
はるかに遠い距離まで届く。
その性質は既存の3Gや4Gに近い。
そのため、既存のアンテナに
5G用のパーツを組み込むだけで
ネットワークの設置ができてしまう。
新たな規格のアンテナを
新規に設置しなければならない
「mmWave」と比べると、
はるかに低いコストで
5Gのネットワークが構築できる。
これを見ると、「sub-6」のほうが
はるかに有利であることが分かる。
つづく
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