◇ 2018年9月から10月にかけて、
次の2つの報告書が発表された。
ひとつは、国防総省を中核とした
各省庁のプロジェクトがまとめたもので、
次は、米議会のリクエストにより、
同じテーマを国防総省内の
「国防戦略委員会」というチームが
まとめた報告書だ。
◇ これらの報告書では、
現在のアメリカの国防産業が、
グローバリゼーションによる
製造業空洞化の影響を受け、
兵器の生産能力が大きく衰えている
実態が明らかになった。
◇ ロシアや中国との間では、
すでに300ほどの領域でアメリカの
国防産業の劣化が進行しており、
アメリカの国防産業は
中国のサプライチェーンに依存しないと、
すでに成り立たなくなっている
状況になっていた。
◇ また、アメリカの安全保障の基礎となり、
アメリカの軍事的な覇権を支える
最新ハイテク兵器のシステムは、
どれも大量のレアメタルを使っている。
特に第4次産業革命の進展で
次世代のITテクノロジーが
急速に発展するにつれ、
レアメタルへの依存度は高くなっている。
しかし、現在のレアメタルの80%は
中国が供給している。
特に、レアメタルの鉱物種のひとつで、
17種類のレアアースでは、
中国への依存度はさらに高く、
90%に達している。
レアアースそのものの埋蔵は
中国だけではなく、
ベトナム、ブラジル、ロシア、インド、
オーストラリア、アメリカ、そして日本など
各国で確認されているものの、
レアアースを原材料として
製品化できるレベルのテクノロジーは、
実は中国に集中しているのが理由だ。
◇ これはアメリカの安全保障にとっては、
深刻な状況である。
このような状況を挽回するために
トランプ政権は、次のような政策に舵を切った。
1)保護貿易による国内製造業の保護
2)政府の公共投資を活発化
3)海外に移転した製造業の生産拠点を
国内回帰させる
このようにして
国内の製造業の基盤を再整備して、
ロシアや中国を凌駕する
強い国防産業を再建することを
目標にしている。
これがトランプ政権が、
中国を敵視するもっとも大きな理由だ。
単なるハイテク覇権をめぐる
争いではないのである。
つづく
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