◇ ではなぜリベラルアーツが必要なのか、
その理由を考えてみることにする。
1つはグローバル化の進展だ。
新興国の経済発展に合わせ、
日本企業の海外進出先はますます拡大。
日本からモノを輸出するだけでなく、
現地で、現地のニーズに合わせた
ビジネスを生み出す必要に迫られている。
そこで問われるのが、
現地のパートナーといかに
密接な信頼関係を築けるか。
海外では人と人との個人的な信頼関係が
ビジネスの成否を分けることが多い。
そこで役立つのが、
歴史や文化の知識だ。
日本人が陥りやすい失敗として、
海外のパートナーから
「おまえはここで何をやりたいんだ」
と聞かれて、
会社がやりたい事業の説明ばかりする
ケースがあるという。
例えば、その国や地域の歴史や文化、
スポーツ、食べ物など何でもいい。
自分の趣味や関心と絡めて、
相手を自分の土俵に
引きずり込むことができれば、
相手も『こいつは面白いやつだ』
と認めてくれる。
◇ 2つ目はリーダーとしての
判断軸を持てることだ。
ビジネスでは正解のない問題に
答えを出さなければならない場面も多い。
自分の判断軸がなければ、
リスクへの恐怖で思考停止に陥ってしまう。
そんなとき、
人間をよりよく知ろうと努力してきた人、
そして歴史上の人物に学んできた人は、
自分の道はこれだ、と
腹をくくれるのではないかと思う。
つまり、リベラルアーツは,
未知の恐怖を受け入れる
心の余裕を生み出す。
こうしたリーダーの態度を見て部下は、
「この人が判断するならついていこう」
と思うようになる。
ビジネスにおける判断とは
「正解を求めることではなく、
人を巻き込み、動かすこと」であり、
特に現代のような変革期の
リーダーには不可欠な要素になる。
◇ 3つ目の理由は組織内の
コミュニケーションの
円滑化に役立つことだ。
多くの職場で飲みニケーションが
すたれて久しいが、
その理由の大部分は上司が部下に
自慢話や説教を繰り返すことだろう。
そうでなく、
リベラルアーツを媒介にして、
同じテーマで上司と部下が
フラットな関係で議論すれば、
お互いの趣味や関心を知ることができ、
心理的な距離を近づけることができる。
例えば、ある会社では部長が主宰して
次長らと一緒に本を読む会を開いている。
全員が同じ本を読んできて
感想を言い合うなかで、
自然に自分の経験を交えて
話すようになっているという。
いわば「今風の伝承の場」に
なっているわけだ。
自分事として考えることで、
学びの深みも違ってくるだろう。
つづく
今日一日の人生を大切に!