◇ 洋画家の梅原龍三郎氏は
遺言状に書いた。
葬式無用
弔問供物(くもつ)固辞すること
生者は死者の為に
煩(わずら)わされるべからず
なかなか、潔い言葉である。
◇ 弔問や供物の扱いはともかくも、
亡き人のためにあれこれと
思い煩うのが世の生者に違いない。
友を亡くせば晩年の無沙汰を悔やみ、
父母を亡くせば身の不孝が胸を刺す。
来週は彼岸の入り。
彼岸とは、春分の日、秋分の日を
中日とする前後7日間のことをいう。
この時期、
仏教では極楽浄土に想いをはせ、
善行を積むべき、
大切な時期とされている。
父母の、あるいは知友の
墓参りに出かける方も多かろう。
◇ 矢島渚男(なぎさお)氏の
一句を思い出す。
仏壇でアリガトマシタ彼岸の子
モミジのような手を合わせて、
回らぬ舌で一生懸命にお話をする
小さな生者の姿が目に浮かぶ。
◇ そう、アリガトマシタ。
その言葉を30年後、50年後の
子供たちから言われるために、
いま現代人は生きている。
◇ 英国の詩人、ジョン・クレアは
友人に宛てた手紙に書いた。
「もし、人生に第2版があるならば、
私は校正をしたい」
悲しいかな、
初版がすべての人生である。
今日一日の人生を大切に!