◇ 軍事衝突の可能性もある
米中の覇権争いに際し、
地理的には米中の間に位置し、
経済的には米中に次ぐ世界3位の日本は、
どう振る舞うべきか。
ヒントとなる言葉が日本企業の中にあった。
◇ ホンダの米国販売会社として
1959年に設立された
アメリカン・ホンダ・モーターで、
今も大切に語り継がれている言葉がある。
それは、
「たいまつは自分の手で」
(Carry our own torch)
発言の主は本田宗一郎の右腕として
ホンダの成長を支えた藤沢武夫氏。
67年に講演で語った内容を英訳し、
「ホンダズ・オリジン」という資料に残して、
ホンダの企業としてのあり方を
米国の販売会社などに説いている。
◇「ホンダは、松明(たいまつ)を
自分の手でかかげていく企業である。
日本の企業には先頭に立って
明かりを灯す企業より、
その後ろにくっついていく企業の方が、
圧倒的に多い。
たとえ、小さな松明であろうと、
自分で作って、
みんなの方角とたとえ違っても、
自分の信じる道を進んでいく、
これがホンダという企業である」
◇ 当時の自動車メーカーは、
自動車を日本から輸出するのに
商社を活用するのが普通だった。
だが、ホンダは全額出資の販売子会社を
米国に立ち上げ、見ず知らずの土地で
自ら販売網を開拓した。
自動車の製造拠点を日系メーカーとして
初めて米国に構えたのもホンダだった。
小さな存在であっても、
自分のことは自分で決める。
この藤沢氏の考え方がその後、
ホンダを世界に通用する
グローバル企業に育て上げた。
◇「国」もこれと同じだろう。
大きなたいまつを掲げる米国に
何も考えずついていくのは簡単だが、
それは自国の未来を他人の手に
委ねていることを意味する。
◇ 藤沢氏の講演はこう続く。
「その松明が照らすところのものは、
先頭の人にとってはいいけれど、
後続の人にとってよいか悪いか、
うしろにいてはわからない。
いつ火が消されるのか、
いつ目の前で扉がしまるか判断できない」
◇ たとえ小さなたいまつでも、
自分の手で持たなければ
未来は切り開けないのである。
米中のどちらのたいまつに
ついていくかではなく、
日本も自らの手でたいまつを持つ
気概がいま求められている。 完
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