◇米中のテクノロジーをめぐる
世界覇権の争いが激化している。
トランプ政権は上下両院が昨年可決した
「国防権限法」に基づき、
2019年8月以降、米政府機関が
「ファーウェイ」など中国通信5社の
製品を調達することを禁じ、
さらに2020年8月からは、
同5社の製品を利用している
世界中のあらゆる企業を、
アメリカ政府機関の調達から
排除することを決めた。
実行されれば世界中の企業が、
中国が絡むサプライチェーンから
排除されかねない。
◇ このような圧力によって、
イギリス、カナダ、オーストラリア、
ニュージーランド、そして日本などの
米同盟国が「ファーウェイ」の
政府機関からの排除を決め、
「ファーウェイ」が各国で計画している
5Gのインフラ建設からの排除も決定した。
これで、「ファーウェイ」を筆頭にした
中国企業の凋落は避けられないとの見方も強い。
◇ しかしながら、トランプ政権の
強い圧力にもかかわらず、
アメリカの同盟国による
「ファーウェイ排除」の動きは鈍い。
むしろ、「ファーウェイ」による
5Gの通信網インフラを
容認する方向に動き出している。
まずイギリスは、2月中旬、
「国家サイバーセキュリティーセンター」が、
「ファーウェイ」について利用を
一部制限すべき領域はあるが、
「安全保障上のリスクは抑えられる」
との判断を固めた。
◇またドイツは、
一部の政府の省庁ではすでに
「ファーウェイ」を、
5Gネットワーク構築の入札に
参加させる暫定合意がなされている。
最終的には内閣と議会の承認が必要だが、
トランプ政権の主張とは裏腹に、
ドイツ当局の調査でも、
「ファーウェイ」機器での不正行為の兆候は
見つけられなかったとした。
ドイツでは「ファーウェイ」機器と通信網が
全面的に容認される方向が強まっている。
◇さらにインドでは、
通信網のアップグレードに
ファーウェイの機器を使えば、
サイバーセキュリティーに
重大な脅威を及ぼすとの
警告にもかかわらず、
ファーウェイが提供する割安な価格や
高い技術力はそうしたリスクを
上回るとの理由で、
政策担当者や通信会社は
ほとんど耳を傾けていない。
トランプ政権の圧力にもかかわらず、
インドでは「ファーウェイ」の5Gの
通信網を導入する方向だ。
このような状況を見ると、
トランプ政権の圧力は有効性を失い、
最終的には「ファーウェイ」の5Gの通信網が
世界の覇権を握る可能性が強いことが分かる。
◇アメリカは、イギリス、オーストラリア、
カナダ、ニュージーランドなどの
文化的にも近い関係にある諸国とは、
それぞれの情報機関が収集した
情報共有のネットワークを持っている。
それが「ファイブ・アイズ」だ。
そしてこの協定の中核となっている国が
アメリカとイギリスだが、
トランプ政権の圧力にもかかわらず、
そのイギリスが「ファーウェイ」機器と
通信網の排除はしないことを
明確にした意味は大きい。
すでにアメリカは同盟国を
結集する力を失っており、
覇権が凋落しているわかりやすい兆候だろう。
つづく
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