◇ ではなぜ北朝鮮は非民主主義国家なのか。
北朝鮮が非民主主義国家である
理由の一つは選挙制度にある。
北朝鮮の選挙制度では一つの選挙区に
一人しか候補者がいない。
そのために投票方式は、
一人の候補者を信任するか信任しないか
の選択肢しかない信任投票になる。
具体的には、候補者名が
あらかじめ記載された投票用紙(選挙票)を
そのまま投票箱に入れて信任を示すか、
候補者名(またはその横)に横線を引いた上で
投票箱に入れて不信任を示すかである。
候補者名に横線を引きに行くと、
不信任であることが周りにも分かる。
そのため憲法上は秘密投票になっているが、
実際には公開投票に等しい。
実際に横線を引きに行く人は皆無であり、
北朝鮮では100%の信任で候補者が
当選するのが普通だ。
こうなると選挙は政治儀式に他ならない。
北朝鮮では、建国以来の選挙で、
実際に落選した候補者がいない。
信任投票は日本でも
最高裁判所裁判官国民審査で採用している。
北朝鮮と同様に、
こちらもまた落選者が過去にいない。
信任投票では他に選択肢がないので
落選することはまずないのである。
◇ 北朝鮮は朝鮮労働党が
必ず執権与党になる一党独裁制をとる。
それを可能にしているのが、
この選挙制度なのだ。
候補者が必ず当選する選挙制度こそが、
北朝鮮を朝鮮労働党による一党独裁の
非民主主義国家にしているのである。
◇ 執政制度によって権力関係に
変化がないのならば、
なぜ北朝鮮は議院内閣制から
大統領制に移行する必要があるのか。
それは、1972年から1998年まで採用していた
「主席制」にヒントがある。
主席制だと、執政長官は、
米国や韓国の大統領と同じように、
対外代表権を持つ。
主席制は、選挙制度を基準にすれば
議院内閣制であるが、
対外代表権を基準にすれば
大統領制といえる。
この対外代表権の有無が大統領と
内閣首相の権限の違いの一つである。
つづく
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