◇ もともと
「サービスとしてのモビリティ(MaaS)」
という考え方は、マイカーに対する概念だった。
マイカーは時間と場所を選ばず、
プライベートな空間で
どこにでも移動できる良さがある半面、
交通渋滞や事故を引き起こし、
乗っていない時間は駐車場に置き去りで、
貴重な土地をムダに占有するという
厄介な面も持っている。
大人数を運ぶのには向いていないし、
環境負荷も高い。
旅客における単位輸送量当たりの
CO2排出量は鉄道の 7倍、
バスの 2倍以上 である。
(国土交通省の試算)
人口密度の高い都市の交通の手段
として見たときに、
マイカーは圧倒的に分が悪い。
だから欧州やカナダ、米国の一部の都市では、
モータリゼーションが急激に進んだ70年代から、
マイカーをやめて鉄道などの
公共交通に回帰しようという動きが生まれた。
◇ 中心市街地からマイカーを締め出し、
廃止していた路面電車を現代的な
LRT(低床型トラム)として復活させ、
バスや鉄道とネットワークすることで
使い勝手を高め、
人と環境に優しい交通網を作り上げる
都市が出てきたのである。
それらの都市では、中心市街地に人が戻り、
街がにぎわいを取り戻した。
そこで90年代になるとLRTを中心とする
まちづくりが世界的に注目され、
公共交通への回帰が
喧伝されるようになったが、
まちづくりと交通政策を
一体的に推し進めることのできる
強力なリーダーシップを持つ自治体以外、
進めることができなかった。
だから、20世紀の間は、
大多数の都市ではマイカー依存から
抜け出すことはできなかったのである。
◇ しかし、21世紀になって状況が変わった。
インターネットとモバイル機器の普及により、
まず、カーシェアリングや
自転車シェアリングのような
新しいモビリティサービスが登場した。
スマホの普及後は、
アプリを使ってオンデマンドで
クルマを呼べる配車サービスが登場した。
とりわけライドシェアと呼ばれる
マイカーを使った配車サービスは、
いつでも好きなときに呼べて、
ドア・ツー・ドアで好きなところに行ける。
タクシーよりずっとリーズナブルで、
アプリ上で決済もできてしまう
という便利さから、
世界中で瞬く間に広がった。
◇ 2019年に向けた注目の
ビジネスキーワードとして急浮上している
「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」
あらゆる交通手段を統合し、
シームレスな移動体験をもたらす概念で、
2030年には世界で100兆円以上に達すると
予測される巨大市場だ。
つづく
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