◇韓国経済を語るとき、
必ず出てくるのが最低賃金の大幅引上げだ。
経済の実態を無視し、去年と今年で
約30%になる最賃引き上げに
耐えられる中小・零細企業は限られている。
それにも関わらず、
大幅引上げに踏み切った背景は、
文政権の支持母体が労働組合と
市民団体であるからだ。
彼ら仲間の要求を満たすことが、
韓国流道徳主義なのだろう。
その結果、多くの国民が職を失っても
われ関せずなのだ。
前記の支持母体は、
選挙運動になると大車輪で
活動してくれる大事な味方になるからだ。
◇ 多くの経済界の人々が、
文大統領による1月10日の
新年記者会見を見て、
次のような結論を下した。
「新年の経済政策基調が
これまでと大きく変わるとは思えない」
というものだ。
今回の新年の挨拶で、
文大統領は現政権の経済路線の
トーレードマークである「所得主導成長」と、
所得主導成長を支える核心政策である
「最低賃金引き上げ」は、
それぞれ1回ずつの言及に抑えた。
その代わり、経済・成長・革新
などの単語が踊った。
だが、演説の最後で、
「『革新的包容国家』を成し遂げる」
と締め括った。
これによって、
最低賃金の大幅引上げの目的である、
分配政策重視の所得主導成長=包容成長
に異常にこだわっていることがわかる。
これを実現するためには、
失業者を増やし経済成長率を
低下させても構わない、
「革新的包容国家」のための
「必要コスト」という認識と思われる。
◇ また、文大統領は、
「一度も経験したことのない国をつくりたい」
とも言っている。
文氏にとってそれは「正しいこと」であり、
従って「変えられないもの」だ
という位置づけのようだ。
「一度も経験したことのない国…」とは結局、
自分たちはこれまでとは全く違う世の中をつくりたい、
という意味のようだ。
韓国の識者には、「革命をやりたい」
という意味に受け取られている。
◇ 文大統領が金科玉条とする
「革新的包容国家」は、
労働者が高い賃金を得て生活できる
理想図を描いている。
これを実現するには、
高い経済成長率を実現し、
公平な分配政策を行なうことになる。
文氏には、前段の高い経済成長率の
概念が消えており、
後段の高い分配率だけが頭にある、
偏った理想図に囚われているのである。
これは、とうてい実現不可能な代物だ。
文大統領が、この「革新的包容国家」に
こだわるところに、
韓国式の「道徳主義」とは、
どいうものかが伺える。
自分の描く夢は絶対的に正しいものである。
従って、
反対する者は「不道徳者」であるという
位置づけとなる。
だから、最低賃金の大幅引上げが、
経済的混乱をもたらしても、
それは過渡的な現象である。
必ず軌道に乗って成功すると
確信しているのだろうか。
◇ 優れた政治家の条件は、
自らの理想と客観的な現実のギャップを
調和する能力が必要とされている。
すなわち、政治家としてのバランス感覚だ。
文大統領にはこれが著しく
欠けているように思われるのである。
◇ 韓国特有の「道徳主義」は、
自己反省を伴わず、
ひたすら相手を罵倒する手段に堕している。
日韓関係では、こういう道徳主義を
頻繁に聞かされる。
その度に日本は、嫌悪感を覚えるだけだ。
韓国も、こういう点に気付く時期だと思う。
つづく
今日一日の人生を大切に!