◇ 昨年12月のカナダ当局による
ファーウェイCFO逮捕劇以来、
中国でカナダ人が拘束される事案が
複数件起こっている。
あからさまとも言える
中国のこの「不当逮捕」だが、
「中国は歴史的に人質外交の国」
であることを忘れてはならない。
他国民をスパイ容疑で逮捕する中国は、
古代からのスパイ国家であり、
そんな中国にとって
日本はスパイ天国であると
思われているのである。
◇ そんな中国でまたカナダ人が逮捕された。
今回はマカオで、カジノ会社と銀行から
2.4億ユーロを騙し取ろうとした容疑で、
61歳の男性が文書偽造で捕まったそうだ。
2018年12月1日に、
ファーウェイの経営幹部・孟晩舟が
カナダ警察当局に逮捕されて以来、
中国でカナダ人が逮捕されたり、
カナダ人容疑者に死刑判決まで
出ていることは、ご承知のとおりだ。
今回逮捕されたカナダ人が、
本当に詐欺を働いたかどうかはわからないが、
「自由時報」は、ファーウェイ事件との
関連性を匂わせる見出しで報じている。
◇ 昨年12月には、
中国で麻薬密輸に関わったとして、
一度有罪判決を受け、
控訴していたカナダ人男性が、
大連市の中級人民法院で
死刑を言い渡された。
彼が逮捕されたのは2014年12月だが、
2018年11月には禁錮15年の
有罪判決が出ていた。
これを不服としてカナダ人男性は
控訴していたのだが、
ファーウェイ幹部が逮捕された後の
12月になって中国の検察が、
「麻薬密輸の中心的人物
だったことが発覚した」
と新たな告発を行ったことで
審理がやり直しとなり、
死刑判決が出されたわけだ。
◇ カナダのトルドー首相はこれに対して、
「カナダ人が罪に問われた事件で、
中国が恣意的に死刑を適用し始めたことを、
我々は政府として強く懸念する。
国際社会の友好国や同盟国に
とっても懸念すべき事態だ」
と指摘している。
この死刑判決の前日には、
休職中の外交官ら2人のカナダ人が
「中国の安全を脅かした」
という理由で拘束されている。
◇ 今年の1月4日時点で、
ファーウェイ幹部逮捕以降、
中国で逮捕・拘束されたカナダ人は
13人にのぼるとされている。
このように、
中国が人質を取って交渉するやり方は、
「人質外交」とも呼ばれており、
これまでもよく繰り返されてきた手法だ。
◇ たとえば、
台湾人もよく中国で逮捕されている。
とくに蔡英文政権になってからは、
台湾人逮捕が目立つようになった。
2017年3月には、台湾民進党の元職員で、
中台交流を推進していたNGO活動家の
李明哲氏が、広東省で中国当局に逮捕された。
その容疑も
「中国の国家安全に危害を与えた」
というものであった。
その後、彼は国家転覆罪で
懲役5年の有罪の判決を受け、
現在も中国の監獄に入れられたままだ。
◇ 台湾政府は中国に対して、
明らかな人権侵害であり、
蔡英文政権への政治的な脅迫だと、
批判している。
歴史的にも、
中国政府は人質外交を繰り返してきた。
たとえば、「西安事件」もそのひとつだ。
◇ 1936年12月12日、
西安で蒋介石が張学良に拉致監禁され、
抗日戦争で共産党との協力を
迫られたというものだ。
解放された蒋介石はこれ以後、
それまでの共産党攻撃を取りやめ、
一転して共産党とともに
抗日戦争へと向かうようになった。
◇ 西安事件の全容は
いまだ謎に包まれていて、
蒋介石の息子である蒋経国が
ソ連に人質として取られていたため、
蒋介石は国共合作を行わざるを
えなかったという説もあるが、
いずれにせよ、なぜ蒋介石が突然、
共産党と協力関係に回ったのかは
明らかになっていない。
中華民国の著名な文学者である胡適は、
「西安事件がなければ共産党は
間もなく滅亡していたはずだ」
と語っている。
こうした成功体験があるからか、
中国共産党はいまだに
「人質外交」を続けている。
◇ 2015年には、香港で
習近平批判の書籍を販売していた
銅鑼湾書店の関係者が拉致され、
中国へ連れ去られて当局に拘束された事件は
まだ記憶に新しいところだ。
しかも書店の大株主である
スウェーデン国籍の桂民海氏などは、
タイに滞在しているところを
中国当局に拉致されて大陸につれて行かれ、
取り調べを受けた。
彼らはいずれも数ヶ月~数年後に
解放されたが、
中国では違法な書籍を売った罪を認める
書類にサインをさせられたという。
また、桂民海氏などは、
2018年にも浙江省寧波から
北京のスウェーデン大使館に向かう列車の中で、
中国当局に拘束されている。
つづく
今日一日の人生を大切に!