Categories: 一般教養・雑学

新たな免疫療法「CAR―T(カーティー)細胞」① vol.396

 

◇ がん特効薬と呼ばれる「オプジーボ」に続き

    新たな免疫療法

 

 「CAR―T(カーティー)細胞」

 

    がいま注目されている。

 

特定の白血病患者の8割に効くという

驚異的な効果の反面、

 

治療費は1回 7000万円 

超えるケースも出てきた。

 

◇ 白血病には、CAR―T細胞療法という

     新規治療法がある。

 

そこに今年4月、ノバルティスが

日本でCAR―T細胞をつかった

治療法「キムリア」

申請するというニュースが出た。

 

患者やその家族には、

 

「これで命をつなげることが

    できるかもしれない」

 

という希望が届いた。

 

◇ ノバルティスのCAR-T細胞「キムリア」

 

患者自身の細胞からつくられている

 CAR―T細胞は、

 

小野薬品工業などが開発した

がん免疫薬「オプジーボ」と同じく、

 

患者の免疫を活用してがんを治療するしくみだ。

 

だが、オプジーボと違い

使用するのは薬ではなく免疫細胞そのもの。

 

◇ 患者から取り出した免疫細胞に、

    がんを発見するレーダーとなる遺伝子を

    組み入れて患者の体内にもどす。

 

体内にもどった免疫細胞は体内に潜む

がん細胞の目印を探し当てて攻撃する。

 

がん患者や家族が

ここまで待望する一番の理由は、

白血病に対する圧倒的な治療成績だ。

 

ノバルティスの臨床試験(治験)では、

抗がん剤が効かなくなり、

 

骨髄移植もできない状態に陥った

難治性の白血病患者の

8割以上に治療効果があった。

 

さらに効果があった患者の

多くでがん細胞がほぼ消失。

 

米食品医薬品局が迅速に承認した。

 

「治療成績だけでみればまさに“特効薬”だ」

 

      製薬会社幹部は一様に口をそろえる。

 

実際、2016年7月に小野薬品が

ベルギーのセリアド社と

技術提携したのを皮切りに、

 

17年1月に第一三共が

米カイト・ファーマと、

 

17年9月には武田薬品が

山口大学発スタートアップの

ノイルイミューン・バイオテックと

 

それぞれ提携、開発に着手。

 

「CARレース」は混戦模様となってきた。

 

世界で最も早く実用化に

こぎ着けたのはノバルティスだ。

 

17年8月30日にCAR―T療法の

第1弾として米国で「キムリア」の承認を取得。

 

次に同年10月18日にはギリアド社の

「イエスカルタ」が承認された。

 

◇ しかし、問題はそのコストだ。

 

キムリアの治療価格は

1回  47万5000ドル(約5300万円)。

 

17年3月に英国で医薬品の価値評価を行う

英国立医療技術評価機構が

公表したCAR―T療法の値段は、

 

1人当たり 50万ポンド(約7200万円)

 

自己負担額を最小限までおさえる

日本の社会保障制度で

本当に受け入れ可能なのか。

 

財政面から否定的な見方をする

専門家の声も根強い。

 

◇ なぜこんなに高いのか。

 

  CAR―T療法が高いのは

   そもそもつくるコストが高いからだ。

 

一般的ながん治療で使われる

抗体医薬などは大量生産できるが、

 

細胞そのものを医薬品として使う場合は

そうはいかないからだ。

 

◇ まず患者の血液から免疫細胞を取り出して、

    CARという遺伝子を組み込み培養する。

 

自己増殖するiPS細胞やES細胞などとちがって、

免疫細胞はそう簡単に増殖してくれない。

 

決まった温度で、

特定の神経伝達物質をあたえるなどして

刺激してやる必要があるのだ。

 

こうした作業はもちろん機械化されておらず、

ほぼ作業員による手作業だ。

 

しかも毎日のようにつきっきりで

細胞の様子を見まもり、

 

途中で死んでしまった細胞を

とりのぞいたり、

 

元気な免疫細胞に移しかえたり

しなければならない。

 

「培養のために必要な時間は

品質チェックなども含め2カ月程度」

 

特別なスキルをもつスタッフの

人件費だけで費用は膨大になる。

 

さらに患者自身の免疫細胞を使うため、

通常の医薬品のように

大量にストックすることもできない。

 

現時点で細胞培養を

自動化する技術が確立できていないのが

価格が高くなる最も大きな理由だという。

                                                 つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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