Categories: 一般教養・雑学

EVでも勝負できない日本    vol.386

 

◇ ガソリンエンジンを積んだ

    自動車の誕生から 130年

 

   自動車は原油の動向に悩まされ続けてきた。

 

電気自動車(EV)は、

こうした「燃料の呪縛」から

人々を解き放つはずだった。

 

だが、新たなボトルネックが生まれている。

 

電池の原料となる コバルト だ。

 

EV市場規模で世界シェアトップに

躍り出た中国がその調達網を握ろうとしている。

 

◇ 広大なアフリカ大陸の中央部に

    位置するコンゴ民主共和国(旧ザイール)

 

乾いた大地が広がるアフリカの最深部で

中国資本による「爆買い」が進む。

 

お目当ての品は、

リチウムイオン電池の正極材の材料として

欠かせないレアメタル(希少金属)のコバルトだ。

 

コンゴと隣国ザンビアの国境付近に広がる、

世界有数の銅山地帯 「カッパーベルト」

 

コバルトは銅生産の副産物として産出され、

現在では世界生産の約6割をコンゴ産が占める。

 

同地には中国資本が相次ぎ進出。

 

コバルトの調達網を次々と押さえ始めている。

 

◇ EVは、スマートフォンのような

    電子機器と比べものにならないほど

   巨大なリチウムイオン電池を搭載する。

 

その普及拡大を受けて、

コバルトの価格は急騰を続けている。

 

国際指標となるロンドン市場の取引価格は

2年前に比べて4倍に値上がりした。

 

コバルトはリチウムイオン電池に使われる

他のレアメタルと比べても、

生産地が圧倒的にコンゴに偏っている。

 

もちろんコバルトの使用量を減らす

次世代電池の開発も進むが、

量産化には時間がかかる。

 

中国政府主導で進められる

急激なEVシフトに対応するためには、

 

世界の電池メーカーや

自動車メーカー各社は当面、

コンゴ産コバルトに頼らざるを得ない。

 

「中東の油田を根こそぎ

       押さえにかかっているようなものだ」

 

経済産業省自動車課はこう例えて警戒する。

 

◇ だがもっとやっかいな問題がある。

 

紛争と協調を繰り返して石油の安定調達に

メドをつけた中東の原産国に比べると、

 

政局が不安定なコンゴ産コバルトの

調達・取引ルールは未整備だ。

 

EVの普及が進めば進むほど、

供給源が限られるコバルトの価格は

高騰を続けるとみられる。

 

さらに複雑なのは、

正規の取引ルートを経ないコバルトが

コンゴから中国に流れ込んでいることだ。

 

「コバルトの調達が大きなネックになる」

 

「1社で調達するのはリスクが高すぎる」

 

「なんとか政府としてバックアップできないか」

 

このように話題に上がったのが、

コバルトの調達問題だった。

 

◇ 日本勢はこれまで、

    トヨタを筆頭にパナソニックなどの

     国内電池大手から車載電池を調達してきた。

 

パナソニックがコバルト調達で

頼るのは住友金属鉱山などである。

 

住友金属鉱山はフィリピンの鉱山で採掘された

ニッケル鉱石などからコバルトを採取しており、

 

日本勢は世界最大の産地コンゴに

確固たる足場を持たない。

 

政情が不安定で、中国資本が根づくコンゴに

日本メーカーが単独で食い込むのは難しい。

 

コバルトが不足することは

今わかったわけではない。

 

中国はアフリカに2007年からの2年で

90億ドル近い支援を表明。

 

インフラ開発や鉱山投資事業の見返りに得たのは

コンゴの銅やコバルトの採掘権だった。

 

当時はリーマンショック前後で、

各国はこの動きを不審な眼差しで見ていたが、

 

中国のEV源流獲得はすでに

この頃から布石が打たれていたのである。

 

日本を含め欧米の自動車大国やメーカーは、

むしろEVの時代が唐突には

訪れないと過信してきた。

 

コバルトに目を向けなかったのも当然だ。

 

中国は長い時間をかけ、

 

周到に「21世紀の石油」

掌握しようとしている。

 

材料を十分に入手できないとなれば

日本はEVでも、

すでに大きく出遅れたことになる。

 

新たな素材の開発をしない限り、

このままでは、ここでも活路を絶たれかねない。

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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