Categories: 一般教養・雑学

変わりつつある日台関係      vol.358

 

◇ 台湾中部の「台中市」

     2019年に開催予定だった、

 

    国際スポーツ大会

「東アジアユースゲームズ」が、

 

    7月下旬、中国の圧力によって中止にった。

 

この決議の多数決で唯一賛成に

回らなかった国が、日本だった。

 

台湾では、日本が「棄権」したことに

「感動」の声が挙がった。

 

台湾出身の評論家・黄文雄氏は

自身のメルマガで、この中国の暴挙がかえって

「日台の絆」を深めたとし、

 

日本でも2020年の東京オリンピックに

「台湾名義」で選手を出場させようという

声が拡がっていることを詳しく紹介している。

 

世界各国に「一つの中国」を押し付け、

ホテルや航空会社など民間企業の表記にまで

「台湾」や「香港」といった表記を

削除するよう要求している中国だが、

 

ついに直接的にスポーツ大会で

台湾に圧力をかけてきた。

 

台湾総統府はこれに対し、

 

「スポーツに対する粗暴な政治介入だ」

 

と非難する声明を出した。

 

開催予定地だった台中は、

すでに大会準備のために4年間かけて

約6億7000万台湾ドル(約24億円)を投じている。

 

それを突然中止と言われても、

はいそうですかと簡単に引き下がれるものではない。

 

もちろん、台中市の林佳龍市長は、

東アジア・オリンピック委員会(EAOC)に対し、

決定の取り消しを求める申請を行った。

 

◇ 中国が、この大会の中止を申し出た理由は、

     2020年の東京オリンピックに向けて、

 

一部の政治的な団体が台湾の選手を

「チャイニーズ・タイペイ」ではなく、

 

「台湾」名義での参加を目指している活動を

しているからというものであった。

 

ここでも、「一つの中国」という姿勢を

前面にの押しつけてきた。

 

そして、中国の政治的な理由による

大会中止の要求に対して、

参加各国は賛成票を投じたという。

 

◇ 参加予定国は、

    台湾、中国、日本、香港、

    マカオ、韓国、北朝鮮、モンゴル、

    そして、オブザーバーとしてグアム。

 

反対は台湾の1票、棄権は日本の1票、

賛成はその他の国の7票であった。

 

会議は圧倒的多数で中止が決定したわけだが、

日本が棄権したことについて台湾では

「感動」の声が多く挙がっている。

 

ネット上では、

 

「中国を前に反対することはできなくても、

    棄権という方法で抗議を示してくれた」

 

「棄権してくれた日本に感謝する」

 

などといった声が多く寄せられた。

 

これに対して中国側の報道は、

 日本は保身のために棄権したまでだ。

 

日本は台湾を助けることはできなかった、

などといった批判的な言い方になっている。

 

◇ 蔡英文総統も、この決定には

     黙っていられなかったようで、

 

自身のフェイスブックで

 

「中国が政治的な力で

   大会開催権を乱暴に剥奪した。

   台湾国民は決して受け入れることはできない」

 

と抗議している。

 

また、頼清徳行政院長(首相に相当)は

「EAOCに正式に抗議する」とも

明らかにしている。

 

さらに、通常は中国を批判することが

少ない野党、中国国民党さえもが、

台中市での開催を「全力で支持する」としている。

 

◇ 2020年の東京オリンピックに向けて、

「台湾」名義での参加を目指す勢力に対しての

警告ともとれる形で中止となった今回の大会だが、

 

皮肉にも中止が決まってからは

台湾内での対中感情はより悪くなり、

 

一部報道では「台湾」名義での

東京五輪参加を目指す住民投票のための署名が、

通常の10倍以上の1日170件に増えているそうだ。

 

蔡英文総統は、大会開催は

 

「スポーツのため、台中市のため、

   台湾のためで、与野党は関係ない」とも言って、

 

台湾人の団結を呼び掛けている。

 

ここに新しい台湾の姿がたしかにある。

 

これまでの、中国の圧力に屈する台湾ではない。

 

◇ それにしても、日台以外の国が

    すべて中国の意見に賛成票を投じた

    という点に政治的根回しや圧力を感じる。

 

だが最近では中国国内でも

習近平に対して、批判が出てきており、

 

今回の台湾への圧力は、

そうしたことへの焦りかもしれない。

 

追い込まれた中国が、

対外的に威嚇行為をすることで

国内の目を外にそらすというのは、

中国政府の常套手段だ。

 

そうしなければならない国内事情を

習近平が抱えているとしか思えない。

 

その証拠に、最近ではメディアで

中国内から発信された習近平批判に

ついての記事が散見される。

 

◇ 台湾における「正名運動」の総責任者は、

     紀政という元オリンピック選手であり、

 

彼女は台湾初の女性メダリストとして

尊敬を集めている。

 

日本でも、台湾の選手を「台湾」名義で

参加させようという草の根運動が広がりつつある。

 

◇ 周辺諸国は、日本は何かを変えてくれると

    期待している。

 

そして今、日本の国会はアメリカに追随して

「台湾関係法」の提出を計画中だ。

*台湾関係法:台湾との同盟関係を
    維持するための米国の法律

 

日本も世界を変える力があることについては、

「台湾関係法」の決議が一つの試金石であり、

 

日本の真価もこの小さな一歩から

はじまると期待したい。

 

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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