◇ 台湾中部の「台中市」で
2019年に開催予定だった、
国際スポーツ大会
「東アジアユースゲームズ」が、
7月下旬、中国の圧力によって中止にった。
この決議の多数決で唯一賛成に
回らなかった国が、日本だった。
台湾では、日本が「棄権」したことに
「感動」の声が挙がった。
台湾出身の評論家・黄文雄氏は
自身のメルマガで、この中国の暴挙がかえって
「日台の絆」を深めたとし、
日本でも2020年の東京オリンピックに
「台湾名義」で選手を出場させようという
声が拡がっていることを詳しく紹介している。
世界各国に「一つの中国」を押し付け、
ホテルや航空会社など民間企業の表記にまで
「台湾」や「香港」といった表記を
削除するよう要求している中国だが、
ついに直接的にスポーツ大会で
台湾に圧力をかけてきた。
台湾総統府はこれに対し、
「スポーツに対する粗暴な政治介入だ」
と非難する声明を出した。
開催予定地だった台中は、
すでに大会準備のために4年間かけて
約6億7000万台湾ドル(約24億円)を投じている。
それを突然中止と言われても、
はいそうですかと簡単に引き下がれるものではない。
もちろん、台中市の林佳龍市長は、
東アジア・オリンピック委員会(EAOC)に対し、
決定の取り消しを求める申請を行った。
◇ 中国が、この大会の中止を申し出た理由は、
2020年の東京オリンピックに向けて、
一部の政治的な団体が台湾の選手を
「チャイニーズ・タイペイ」ではなく、
「台湾」名義での参加を目指している活動を
しているからというものであった。
ここでも、「一つの中国」という姿勢を
前面にの押しつけてきた。
そして、中国の政治的な理由による
大会中止の要求に対して、
参加各国は賛成票を投じたという。
◇ 参加予定国は、
台湾、中国、日本、香港、
マカオ、韓国、北朝鮮、モンゴル、
そして、オブザーバーとしてグアム。
反対は台湾の1票、棄権は日本の1票、
賛成はその他の国の7票であった。
会議は圧倒的多数で中止が決定したわけだが、
日本が棄権したことについて台湾では
「感動」の声が多く挙がっている。
ネット上では、
「中国を前に反対することはできなくても、
棄権という方法で抗議を示してくれた」
「棄権してくれた日本に感謝する」
などといった声が多く寄せられた。
これに対して中国側の報道は、
日本は保身のために棄権したまでだ。
日本は台湾を助けることはできなかった、
などといった批判的な言い方になっている。
◇ 蔡英文総統も、この決定には
黙っていられなかったようで、
自身のフェイスブックで
「中国が政治的な力で
大会開催権を乱暴に剥奪した。
台湾国民は決して受け入れることはできない」
と抗議している。
また、頼清徳行政院長(首相に相当)は
「EAOCに正式に抗議する」とも
明らかにしている。
さらに、通常は中国を批判することが
少ない野党、中国国民党さえもが、
台中市での開催を「全力で支持する」としている。
◇ 2020年の東京オリンピックに向けて、
「台湾」名義での参加を目指す勢力に対しての
警告ともとれる形で中止となった今回の大会だが、
皮肉にも中止が決まってからは
台湾内での対中感情はより悪くなり、
一部報道では「台湾」名義での
東京五輪参加を目指す住民投票のための署名が、
通常の10倍以上の1日170件に増えているそうだ。
蔡英文総統は、大会開催は
「スポーツのため、台中市のため、
台湾のためで、与野党は関係ない」とも言って、
台湾人の団結を呼び掛けている。
ここに新しい台湾の姿がたしかにある。
これまでの、中国の圧力に屈する台湾ではない。
◇ それにしても、日台以外の国が
すべて中国の意見に賛成票を投じた
という点に政治的根回しや圧力を感じる。
だが最近では中国国内でも
習近平に対して、批判が出てきており、
今回の台湾への圧力は、
そうしたことへの焦りかもしれない。
追い込まれた中国が、
対外的に威嚇行為をすることで
国内の目を外にそらすというのは、
中国政府の常套手段だ。
そうしなければならない国内事情を
習近平が抱えているとしか思えない。
その証拠に、最近ではメディアで
中国内から発信された習近平批判に
ついての記事が散見される。
◇ 台湾における「正名運動」の総責任者は、
紀政という元オリンピック選手であり、
彼女は台湾初の女性メダリストとして
尊敬を集めている。
日本でも、台湾の選手を「台湾」名義で
参加させようという草の根運動が広がりつつある。
◇ 周辺諸国は、日本は何かを変えてくれると
期待している。
そして今、日本の国会はアメリカに追随して
「台湾関係法」の提出を計画中だ。
*台湾関係法:台湾との同盟関係を
維持するための米国の法律
日本も世界を変える力があることについては、
「台湾関係法」の決議が一つの試金石であり、
日本の真価もこの小さな一歩から
はじまると期待したい。
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