Categories: 一般教養・雑学

自家用車の車検は高くないか ②    vol.350

 

◇ 制度が設けられた当初は

    各地にある運輸局の「車検場」に

    持ち込んで車検を実施していたが、

 

自動車の保有台数の増加に伴い、

民間にも一部開放された。

 

それが、設備や技術、管理能力があり、

資格を持つ検査員がいると国が認めた

 

   「指定工場」

 

全国に9万超ある自動車整備工場のうち、

約3分の1がこうした指定工場だ。

 

95年の道路運送車両法改正で、

整備工場での点検・整備を受けずに、

 

直接、自分で車検場に持ち込む、

いわゆる「ユーザー車検」も可能になった。

 

ただ、車検を確実に通すために、

まずは整備工場に車両を持ち込むケースが多い。

 

道路運送車両法では

ドライバーに定期点検を義務付けており、

この点検と車検をセットで実施するのが一般的だ。

 

◇ 戦後間もない頃に確立した

     日本の車検制度。

 

当時は今より技術的に

未成熟な自動車が走行しており、

車道で故障を起こすことも少なくなかった。

 

国土が狭く、道路も狭いなかで、

自動車が立ち往生すれば、

経済的な損失になる。

 

そんな問題意識から、

国がお墨付きを与える車検制度は生まれた。

                                                    

◇ そうして増えた日本の自動車の

    保有台数は今や 8000万台超

 

毎年2000万台以上の自動車が

車検を受けている。

 

日本自動車整備振興会連合会によれば、

これだけの数の車両の点検・整備を担うために、

 

50万人以上が働き、総整備売上高は

年5兆円を超す市場に育った。

 

もっとも、これだけ規模が膨らんだ裏には、

すでに見てきた不透明な

料金体系があるのは確かだろう。

 

海外ではそもそも日本のような

複雑な車検制度はない。

 

日本では、

点検・整備の仕組みがあまりにも複雑で、

何が適正な価格水準かの判断を働かせにくい。

 

そうした状況を利用して、

整備事業者が収益拡大を図ってきたともいえる。

 

もっとも、販売店や整備工場が

整備ビジネスに活路を

求めざるを得ない事情は確かにある。

 

◇ 日本の新車販売台数は500万台強と、

   少子高齢化を背景に1990年のピーク時の

   3分の2程度 に減ってしまった。

 

当然、ガソリン需要も減り、自動車ディーラーや

ガソリンスタンドの収益は厳しさを増す。

 

部品交換にうまみのある車検ビジネスは

収益確保の貴重な機会なのだ。

 

車検ビジネスは自動車メーカーに

とっても手放せない。

 

その現実を露呈したのが、

昨秋に日産自動車やSUBARUで発覚した

無資格者による完成検査問題だ。

 

車検ではすでに見たように、

国が認めた工場と検査員が検査する。

 

だから国は自動車メーカーにも

資格を持った従業員が検査するよう求めている。

 

にもかかわらず、日産やSUBARUは

無資格者に従事させていたことが、

問題になった。

 

ただ、自動車メーカーから見れば、

工場での完成検査は

 

「ワイパーを作動させるなど、

       誰でもできるような検査」という。

 

国が求める有資格者による完成検査は

「生産効率を下げる作業」と捉えがちだ。

 

もし、そうであるなら、

制度を変えるよう国に求めればいいが、

実際にはそうしたことはしない。

 

完成検査の否定が、車検制度の存在を

否定することになるからだ。

 

安全を担保する制度がなくなることを

恐れてのことではない。

 

車検制度がなくなれば、

自動車メーカーが得る、

利幅の大きい補修部品収入が減る。

 

さらに深刻なのは

 

「自社系列のディーラーの整備収入や

     補修部品収入が激減すること」

 

自動車販売網が崩壊しかねないのだ。

 

◇ 巨大な車検ビジネスには「官」も巣くう。

 

     車検費用に含まれる重量税や

      自賠責保険料、印紙代の「法定費用」が、

      彼らにとっての「商機」だ。

 

例えば重量税の支払いに使う印紙。

 

これを売りさばくのは各都道府県にある

「整備振興会」という団体で、

印紙販売の手数料を受け取っている。

 

指定工場で車検を受けた際に発行される

「保安基準適合証(保適証)」も、

整備振興会の売り上げとなる。

 

国に代行して業務をしているのだから、

当然、人件費を賄うための料金と

考えることはできる。

 

だが、この値段は、競争原理もなく、

「言い値」で決められているといえなくもない。

 

ある整備事業者は、

「大きな振興会だと保適証などの販売で

    年数億円の利益を得ている。

   これらは項目に出てこないが車検代に含まれる」

 

と指摘する。

                                                           つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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