◇ 中国で先月、ビルから飛び降り自殺
しようとしている若い女性を
見物しに集まった観衆から
「早く飛べよ」 と
はやし立てる声がいくつも上がった、
というニュースを聞いたとき、
少なくない中国人が思い出したのは
魯迅の文章の一節だっただろう。
自殺の一件は、飛び降りた女性が
セクハラの被害を受けていたこともあり、
日本でも比較的大きく報じられたので、
ご存知の方も多いと思う。
◇ 中国内陸の甘粛省慶陽という町に住む
李さんという19歳の女性は、
2年前から教師によるセクハラ被害に遭っていた。
しかし学校側は問題の解決に消極的で、
かつ支援に当たった心のケア担当の人物が
専門家でなかったこともあり、
李さんはさらに心を病んでしまう。
そして自ら命を絶つ道を選んだ李さんは
ビルの8階から飛び降り自殺を図ろうとした。
駆けつけた消防が説得を試みること数時間。
野次馬の中から、
冒頭で紹介した心ない野次がいくつも飛び、
それを聞いた他の野次馬から笑い声が上がった。
様子を動画投稿サイトで
実況中継する者もいたという。
李さんは、近くで説得に当たっていた
消防隊員に礼を述べ、
「飛び降りなきゃいけないみたい」
の一言を残して身を投げ出し絶命した。
◇ 事件を伝える中国メディアには
「冷血」「鬼畜」といった言葉をタイトルに並べ、
野次馬を厳しく非難するものが目立った。
中国ではその後、
広東省汕頭で33歳の男性、
江蘇省南通で女性、
湖南省長沙で30代の女性といった具合に、
ビルから飛び降りようとする人と、
それを見物する野次馬が心ない野次や嘲笑を
浴びせるという事件が相次いだ。
どの現場でも野次馬が
「暑いんだから早く飛べよ」
と大声で叫んだり、
「飛べ!飛べ!飛べ!」
の大合唱が起きたりしたのだという。
心ない野次を飛ばした者たちを
擁護するつもりはさらさら無い。
ただ、そのような野次を飛ばしたり、
笑ったりできるのは、
その人らが中国メディアの書くように
彼らが「冷血」で「鬼畜」だからなのか?
という疑問が生じるのである。
つづく
今日一日の人生を大切に!