Categories: 一般教養・雑学

中国人の死生観 ① vol.334

 

◇ 中国で先月、ビルから飛び降り自殺

     しようとしている若い女性を

    見物しに集まった観衆から

         「早く飛べよ」 

はやし立てる声がいくつも上がった、

    というニュースを聞いたとき、

 

少なくない中国人が思い出したのは

魯迅の文章の一節だっただろう。

 

自殺の一件は、飛び降りた女性が

 セクハラの被害を受けていたこともあり、

 

日本でも比較的大きく報じられたので、

ご存知の方も多いと思う。

 

◇ 中国内陸の甘粛省慶陽という町に住む

    李さんという19歳の女性は、

    2年前から教師によるセクハラ被害に遭っていた。

 

しかし学校側は問題の解決に消極的で、

かつ支援に当たった心のケア担当の人物が

専門家でなかったこともあり、

李さんはさらに心を病んでしまう。

 

そして自ら命を絶つ道を選んだ李さんは

ビルの8階から飛び降り自殺を図ろうとした。

 

駆けつけた消防が説得を試みること数時間。

 

野次馬の中から、

冒頭で紹介した心ない野次がいくつも飛び、

それを聞いた他の野次馬から笑い声が上がった。

 

様子を動画投稿サイトで

実況中継する者もいたという。

 

李さんは、近くで説得に当たっていた

消防隊員に礼を述べ、

 

「飛び降りなきゃいけないみたい」

 

の一言を残して身を投げ出し絶命した。

 

◇ 事件を伝える中国メディアには

  「冷血」「鬼畜」といった言葉をタイトルに並べ、

   野次馬を厳しく非難するものが目立った。

 

中国ではその後、

 

広東省汕頭で33歳の男性、

江蘇省南通で女性、

湖南省長沙で30代の女性といった具合に、

 

ビルから飛び降りようとする人と、

それを見物する野次馬が心ない野次や嘲笑を

浴びせるという事件が相次いだ。

 

どの現場でも野次馬が

 

「暑いんだから早く飛べよ」

 

 と大声で叫んだり、

 

「飛べ!飛べ!飛べ!」

 

の大合唱が起きたりしたのだという。

 

心ない野次を飛ばした者たちを

擁護するつもりはさらさら無い。

 

ただ、そのような野次を飛ばしたり、

笑ったりできるのは、

 

その人らが中国メディアの書くように

彼らが「冷血」「鬼畜」だからなのか?

 

という疑問が生じるのである。

                                      つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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