「君は『PC WEEK』って知ってるか?
毎号読んだ方がいいよ」
◇ 1987年7月、日本から訪れた孫正義氏に、
米マイクロソフト創業者の
ビル・ゲイツはこう告げた。
「この業界で何が起きているか分かるから」
孫氏はソフトバンクが出版する
新雑誌の初回を飾るインタビューのために
米シアトル郊外までゲイツに会いに行った。
取材前の何気ない雑談の中で
ゲイツがつぶやいたこの「ヒント」が
ずっと頭の中に残っていた。
「ビル・ゲイツが薦めるくらいの雑誌ということは…」
孫氏はその雑誌を読むだけでは飽き足らなかった。
◇ 94年に株式を店頭公開して
まとまったカネを手にすると、
発行元の米ジフ・デービスを買収してしまった。
他にも展示会運営の米コムデックスなど、
当時のソフトバンクの主力事業だった
コンピューター・ソフトの卸売りとは
無関係に見える買収に乗り出した。
「僕が欲しかったのは
『地図とコンパス』だったんだ」
この教養講座でも
今の時代を生きる術を紹介したが、
あの時代に孫氏はすでにその重要性を認識して、
「本物」を見抜くツール手に入れていたのである。
◇ それなら雑誌を読んで展示会を
歩けばいいのではないのか。
孫氏によると、
実は当時、コムデックスのオーナーは,
展示会の開催前日にゲイツと
ゴルフする習慣があった。
テクノロジーの方向性を決めるほどの
影響力を持つゲイツと丸一日語りあう
「権利」を引き継げるのだ。
孫氏は
それだけでコムデックスを買う価値があると思った。
「バランス・シートには載らない資産なんですよ」
と語る。
コムデックスの買収額は8億ドル。
当時のソフトバンクの身の丈を超える金額だが、
孫は十分に「モト」を取ったと豪語する。
遠回りな発想に見えるが、
孫の狙いは結果的に当たった。
つづく
今日一日の人生を大切に!