Categories: 一般教養・雑学

ダムの放流が深刻な被害をもたらした7月の豪雨 vol.321

 

◇ 想定を遥かに上回る雨量で、

    200人を超える犠牲者を出してしまった

 

     「平成30年7月豪雨」

 

愛媛県西予市などでは

ダムの放流により肱川が氾濫し、

9人の方の命が奪われる事態となった。

 

作家の冷泉彰彦氏は

ダムを巡る3つの問題点を上げ、

「ダム政策の総見直し」を提言している。

 

西日本豪雨の災害は、発生から2週間以上を経ても

依然として事態の全容は解明されていない。

 

そんな中で、多くの水害において

「ダム」あるいは「砂防ダム」

問題が絡んでいることが

徐々に明らかになってきた。

 

この「ダム」には

大きく分けて3つの問題がある。

 

◇ 1つ目は、ダムが満水になった場合の

    放流についてだ。

 

   その典型的な例としては、

    7月7日に愛媛県の西予市などに

    深刻な被害をもたらした

  「肱川(ひじかわ)」の氾濫だ。

 

この氾濫は、肱川の上流にある

「野村ダム」「鹿野川ダム」

満水になる危険が生じたために、

 

国交省四国地方整備局として

 

「2つのダムでは入ってきた

      水の量と同じ量を放流する」

 

という異例の措置を取ったために発生した。

 

問題は、

その放水量が安全基準の6倍という

猛烈なものだったということになる。

 

国交省の四国地方整備局は災害の

4日後に当たる7月11日に会見を行って、

この操作は適切なものだったとしている。

 

だが、問題は、その放流を行ったことで、

広範囲にわたって洪水が発生、

 

逃げ遅れたり土砂崩れに巻き込まれるなど

9人の犠牲者を出したということだ。

 

愛媛新聞によれば、

11日の時点で四国地方整備局の担当者は

 

「下流域の被害は予想されていたが、

   想定外の雨量で、ダムの容量がいっぱいになり、

   放流はやむをえなかった。

   住民への情報の周知は適切だったと思う」

 

としている。

 

こうした事態を受けて、

氾濫した肱川にあるダムの放流の操作について、

 

「第三者委員会」を設け、

住民への周知方法の検証や

ダム操作方法の技術的考察などを

行うと表明している。

 

とにかく、今後も日本列島はこうした水害と

戦っていかなくてはならないわけだ。

 

その中で、ダムの放流による死亡事故と

いうのは人災として、人間の側の工夫で

何とかなる問題なので、

 

特に時間の迫る中で避難を

徹底する方法について、

早急に検討しなければならない。

 

◇ 2つ目は、

  では「ダムというのは危険か?」というと、

  これは絶対に違うということだ。

 

ダムの最大貯水量が100で、

通常の貯水量が60、

 

つまり40の余裕がある場合に

その上流に降った雨が40であれば、

 

下流の災害は完全に食い止めることができる。

 

これは極めて大事なことで、

河川の水量を調節する本格的なダムもそうであり、

 

簡易型のダムでも、

あるいは砂防ダムでも同じことなのだ。

 

想定内の降雨であれば、

災害をほぼ完全に防止できる。

 

問題は、

余裕が40の貯水量のダムの上流に

50が降った場合だ。

 

その場合は、少なくとも10は

急いで放流しなくてはならない。

 

なぜかというと、

ダムを水が超えて行くことになると、

 

最悪の場合ダムが決壊するからだ。

 

万が一決壊するようだと、

一気に100の水が下流に殺到して

壊滅的な被害を出してしまう。

 

では、今回のように満水になって

余裕が0のダムの上流に

100が降ったという場合はどうするか。

 

これは放置しておけば、

ダムが決壊して200の水が下流に押し寄せる、

 

つまり流域全体には瞬時に

破壊的な被害をもたらすわけだ。

 

だから、

 

「急いで100の放流をしてしまった」

 

ということだ。

 

このようなメカニズムを含めて、

ダムの「使い方」というものを国交省だけでなく、

 

地方自治体から地域住民までが

十分に理解を共有しておくことは必要と思う。

 

◇ 3番目は、今回の西日本豪雨のために、

    多くの河川ダムや砂防ダムに

   異常な量の土砂が入っているということだ。

 

土砂が入って、それでもダムが

決壊していないのであれば、

 

所定の性能を発揮して、

下流の被害を食い止めたということは言える。

 

だが、今回の被災で土砂が

満タン近く入っているとなると、

 

次の降雨時には新たな土石流を受け止める

容量はないということになる。

 

というよりも、

降水量を受け止めるキャパも減っていて、

大変に危険な状態と言える。

 

所轄官庁である国交省などは、

既に試算を始めていると思うが、

 

河川ダムも、砂防ダムも、今回の被災で

「決壊しなかった」場合でも、

 

溜まった土石を除去する作業は、

絶対に必要だ。

 

容量が100のダムに、50の土石が入っていると、

キャパシティは半分になっているからだ。

 

そして、決壊したダムについては、

正に危険箇所であるので、再建しなくてはならない。

 

現在は、被災地での生活の復興が最優先だが、

こうしたダムの再建や浚渫にかかる費用について、

 

国としてしっかり検討することは

必要になって来ると思う。

 

年を追うごとに自然災害は

ひどくなる一方であり、

 

来年はさらに甚大な被害を被ることは

誰でも予測できる。

 

是非、来年に向けて早急に

今回の教訓を生かして欲しい。

 

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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