Categories: 一般教養・雑学

自閉症スペクトラム障害とはどんな病気 vol.319

 

◇ フジテレビ系で7月12日に

  スタートしたドラマ『グッド・ドクター』

 

このドラマの主人公・新堂湊(みなと)は、

先天的に自閉症スペクトラム障害を

抱える小児外科の研修医だ。

 

自閉症スペクトラム障害には

様々な分類があるが、

 

社会性や他者への共感能力が

欠けていたり、

 

興味の範囲が極端に狭かったりと

いった特性を持ち、

 

それらの特性が日常生活における

コミュニケーションや仕事の障害として表れ、

 

結果、障害を抱えている人への

偏見や反発につながることがある。

 

誰もがこのドラマを観て、

 

「自閉症なのに医師になんてなれるわけがない」

 

   と思われるだろう。

 

しかし、実際に自閉症スペクトラム障害を

抱える医師は珍しくないそうだ。

 

『グッド・ドクター』の監修者、

     精神科医の西脇俊二氏も

     自閉症スペクトラム障害の

     一つであるアスペルガー症。

 

自閉症スペクトラム障害とは、

どういうものか。

 

自閉症スペクトラム障害を抱える人は、

脳機能の偏りが引き起こす様々な

特性を持っている。

 

たとえば、

 

相手の感情やその場の空気が読めない。

 

興味の幅が狭く、

細部に強くこだわってしまうため、

 

ものごとを俯瞰したり全体像を

把握したりすることが苦手。

 

自分流のルールを持っていて、

臨機応変に対応できない。

 

こういった症状をもとに

診断基準が決められていて、

 

その条件を満たし、

かつ社会生活を維持するのに

支障をきたすような場合に、

自閉症スペクトラム障害と診断される。

 

この程度であれば、

結構まわりにもいるような気がする。

 

◇ まだはっきりと究明されていないが

    脳の様々な部分に萎縮があることで

   障害が起こるといわれている。

 

たとえば、自閉症と診断された人の25%は、

感情をつかさどる扁桃体という部位が

萎縮していたという論文がある。

 

また、人の顔を認識する紡錘状回という部位や、

目や口の動きを認識する上側頭溝という部位も

障害されていることが多い。

 

だから、人の表情を読み取ることが

苦手ということになる。

 

もうひとつ、特徴的なのが前頭葉だ。

 

前頭葉にはミラーニューロンという

神経細胞があるが、

 

これは相手の気持ちに共感するときに

必要な機能になる。

 

一般的には、他人がつねられて

痛がっているのを見たら、

ミラーニューロンが働くので

自分もその痛みを想像できる。

 

つまり相手の痛みがわかる。

 

でも、自閉症スペクトラム障害の人は

それがうまく働いていないため

「痛そう」と思えず、

 

悪気はなくても動物のしっぽをつかんで

持ち上げてしまったりする。

 

このようなパーツごとの異常に加えて、

脳のそれぞれの領域が

うまく連係できていなかったり、

 

脳内ホルモンの分泌にも異常があったりと、

 

複合的な要因で自閉症スペクトラム障害に

なると考えられている。

 

◇アスペルガー症候群のある患者は、

 

「自覚していなかった頃はひどかったんですが、

    今は大丈夫ですよ。

 こうやってコミュニケーションを取ったり、

 社会生活を送ったりできるように、

 訓練してスキルを身につけてきましたから」

 

また別の患者は、

 

「私はアスペルガー症候群の特性から、

   相手の気持ちをおもんぱかったり、

 その場の空気を読むことができませんでした。

 

 でも、今では「自分が笑うと相手も喜んでくれる」

 といったことは理解できるようになりました」

 

自然と笑顔にはなれなくても、

楽しいと感じたときは笑顔に見えるように

口を「イ」と言うときの形にする。

 

人の話を遮らないように、

自分の言いたいことは10のうち

1しか発言しないと決める。

 

仕事の全体像を考えながら

段取りができないので、

 

タスクを細かく書き出して、

ビジュアルとしてとらえられるようにする。

 

生まれ持った自閉症やアスペルガー症候群の

特性は変わることはないが、

 

このようなスキルで足りない部分を

補うことができる。

 

◇医療関係者でさえ、名前は知っていても

 

 「なにか閉じこもっている人でしょう?」

 

くらいの認識の方が圧倒的に多い。

 

しかし、

“空気が読めない” ところがあったとしても、

医師としての仕事はできる。

 

『グッド・ドクター』の主人公のような、

自閉症スペクトラム障害の医師は多い。

 

とくにアスペルガーの場合は

記憶力やIQが高いため、

医師国家試験や司法試験が得意だ。

 

ただ、仕事でも生活でも、

結局はスキルや知識より、

人間関係の方が大事なことは言うまでもない。

 

しかしこのドラマにより

この病気に関する我々の認識が変わり、

 

そしてさらに彼らの素晴らしい特性をうまく

取り込むことができるようになれば、

 

より素晴らしい社会になることは間違いない。

 

ぜひ、一度このドラマを観て欲しい。

 

 

今日一日の人生を大切に!

トンビ博士

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