◇ 林静一の代表作「赤色エレジー」は、
新宿区の中井、下落合あたりの
神田川沿いが舞台だ。
漫画家を目指す青年、一郎と
恋人、幸子の同棲生活を描いた、
1970年代の漫画を代表する名作だ。
先日、都内の古本屋で目に飛び込んできた
懐かしい1冊を買ってきた。
そういえば、本作をモチーフにした、
あがた森魚の歌「赤色エレジー」も当時大ヒットした。
◇ それにしても、この漫画は暗い。
とてつもなく 暗いのだ。
狭いアパートの一室。
幸子は暖をとるため、コンロに手をかざす。
そばには小さなマッチ箱。
この現実がまさに昭和なんだ。
これこそが昭和なんだ。
この昭和な設定、描写が
ノスタルジーを掻き立てる。
◇ 狭い四畳半の物語が、
限りなく広がってゆく。
喧嘩し、傷つけあいながらも愛し合う2人。
時間がただサラサラと流れていく。
夢と挫折、
貧しさ、現実の残酷さ、
哀しみ、生活苦、
それを一枚でこんなに美しく描けるなんて。
あのメロディーが頭の中でうごめく。
若さがあるから乗り越えられるのか、
愛があるから乗り越えられるのか、
明日が見えないから耐えられるのか。
一郎と幸子のエレジー(哀歌)が、
トンビの心を締め付ける。
今日一日の人生を大切に!