◇ 歴史に名を残した天才たちは、
どんな風に「休息」して、身体や脳を
回復させていたのだろうか。
彼らは週に100時間働く
ワーカホリックだったのだろうか。
それとも1日に4時間程度しか働かない
怠け者だったのだろうか。
そんなことを知りたい人にとって
参考になるのが
『シリコンバレー式 よい休息』である。
(日経BP社刊)
この本の著者は、
アレックス・スジョン‐キム・パン。
クリエイティブな業績で知られる人物の
生涯を調べてみたところ、
意外な事実に気づいたのが
本の執筆のきっかけになったという。
創造性の高い仕事をした人々の
日々の生活をじっくり見てみると、
それぞれ最も重要な業績と思えるものに
費やしていた時間は、
1日のうちほんの数時間でした。
残りの時間は、山道を歩いたり、
昼寝をしたり、友人と散歩をしたり、
あるいは座って考え事をしたりしていました。
つまり、彼らの創造性と生産性は、
エンドレスな努力の成果では
ありませんでした。
彼らの人並みはずれた偉業を生み出したのは、
適度な労働時間だったのです.
(著書より引用)
◇ たとえば世界史上最も有名な科学書のひとつ
『種の起源』を書いたチャールズ・ダーウィン。
ロンドン南東のダウンという村で
暮らしていた彼の典型的な1日は、
次のようなものだった。
朝、起床すると、まず散歩と朝食。
それから午前8時までに書斎に入り、
1時間半ほどしっかり仕事をする。
9時半になると、
届いた郵便物に目を通し、手紙を書く。
10時半から正午までが本格的な研究の時間。
邸宅の敷地内にある鳥小屋や温室、
実験室などで過ごした。
それから1時間ほど散歩をしてから
昼食をとり、また手紙の返事を書く。
3時からは1時間ほど昼寝。
昼寝の後、もう一度散歩をしてから、
書斎に戻り、家族と夕食を一緒にとる
5時半まで仕事をした。
つまり、ダーウィンが、
1日のうちに仕事をしたのは、
午前中に「90分」のセッションが2回、
午後に「90分弱」のセッションが1回 だった。
◇ 1日に4時間程度しか
働かなかった天才は少なくない。
フランスの数学者アンリ・ポアンカレは、
「19世紀最高の数学の天才」
と称される人物だが、
頭を使う思索は、午前10時から正午までと
午後5時から7時までの間にすると決めていた。
英国の大文豪チャールズ・ディケンズは、
午前9時から午後2時まで
書斎にこもって5時間執筆すると、
その日の仕事を終わりにした。
こうした天才たちは、
決して仕事嫌いだったわけではない。
むしろ成功への意欲は
人一倍強かったといっていい。
彼らは仕事で成功したかったからこそ、
労働時間を制限し、
「休息」を大切にしていたのである。
◇ パンに言わせれば、
良質の仕事を生み出すのは、
良質の「休息」
だが現代人には、「働くこと」を美徳だと考え、
「休むこと」を怠惰とみなす人が多い。
そのせいで「休息」の重要性を
等閑視しがちなのだという。
しかし最近は働き方も大きく変わってきた。
グーグルでは、昼寝用の快眠マシン
『ナップポッド』が設置され、
ネットフリックスでは、有給休暇を
取り放題にする制度が導入された。
スラックやアサナといった急成長企業では、
日中はハードに働き、
夕方にはオフィスを空っぽにする方針が
掲げられている。
つづく
今日一日の人生を大切に!