◇ 戦争のまつわる格言に
「敗軍の将、兵を語らず」
というものがある。
「敗軍の将」つまり負けた方の
指揮官(リーダー)は
「兵について語ってはいけない」
という意味である。
兵を語るというのは、
負けた理由を兵隊(部下)のせいにして、
兵隊の数が足りなかったから負けたとか、
兵隊の能力が十分でなかったから負けた
といった言い訳をすることを指す。
つまりリーダーは、兵隊の能力や
補給などをすべての面を事前に
理解して戦いに臨んだのであり、
負けたとしたら
それは100%指揮官のせいである
ということだ。
この点において、
アメリカ人の考え方は非常に面白い。
◇ アメリカ海軍において、
戦時における空母や巡洋艦の
艦長の選抜基準は明確だという。
それは
「理由の如何に問わず、
今まで船を沈めたことがない人」
だそうだ。
「理由の如何に問わず」という
ところが非常に特徴的だ。
艦長としての能力が高く
統率力があるのはもちろんだが、
事故やトラブルも含めて
「船を沈めたことがない人」
というところが重要なのである。
アメリカ人は基本的に、
将来のことを完全に予測することは
不可能だと考えている。
だからこそ、
リーダーには能力があるのはもちろんのこと、
「運」がいいことを求めているのだろう。
◇ これとは正反対だったのが旧日本軍である。
旧日本海軍における指揮官の
選抜基準は明確であった。
海軍兵学校、海軍大学校での成績である。
いわゆる、
ハンモックナンバー(成績順)によって
階級が決まった。
ようするに、受験勉強ができて、
学校でも成績が良かった人を
出世させていた。
実際の戦争をさせてみて
どうっだったかはまったく関係ない。
たとえば、作戦が失敗して船を何隻も沈めて
多くの戦死者が出たとしても,
しばらく謹慎期間はあるものの、
忘れられた頃に、再度大将や中将として
抜擢された。
そしてまた同じ失敗を繰り返すのである。
これは陸軍でもまったく同様であり、
これこそが「失敗の本質」であった。
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