◇ 他者の動作を目にしたときに、
自分の動作であるかのように
反応する神経細胞を
ミラー・ニューロン という。
他者の動作を自分の動作のように
捉えてしまう上で、
この種のニューロン(神経細胞)は
大変重要である。
ニューロンそのものが重要というよりも、
脳と脳の間で「他者と同じ」が
成立するための生物学的な根拠、
さらには考え方の実例として重要なのである。
◇ 最初にこの種のニューロンが
発見されたのは、サルの脳である。
脳の各部が何をしているのか、
それを調べるために研究者は、
サルの脳に電極を刺したままにして、
実験を行った。
脳に差し込まれた電極近くのニューロンが
活動すると、電位の変化が記録される。
いつそういう活動がいつ生じるか、
それはわからないから、
電位の変化があれば、
ブザーが鳴るようにしておく。
ブザーが鳴ったら、サルが何をしているか、
それを見にいく。
サルのその行動と電極を刺した脳の部分の
活動には関係があるはずだからである。
ある日ブザーが鳴った時に、
研究者はサルが見ているところで、
アイスクリームを食べていた。
それを見たサルの脳の一部が活動した。
ではアイスクリームに反応したのか。
そこでサルにアイスクリームを
ただ見せてみると、別に脳は反応しない。
研究者が食べると反応する。
アイスクリームを見ても反応しない、
他人がアイスクリームを食べると反応する。
そこで
アイスクリームを食べることに反応するのだな、
ということがわかった。
そこまではいい。
そしてさらに
サルにアイスクリームを見せるだけではなく、
食べさせてみると、
脳の同じ 部分が活動したのである。
つまりサルの脳のこの部分は、
誰かがアイスクリームを
食べているのを見ても、
自分が食べても「同じように」
反応するわけである。
「アイスクリームを食べる」ことについて、
見るだけでも、自分で食べても、
同じように反応する細胞がサルには存在する。
サルは、他者がやっていることを、
あたかも鏡に写った自分を
見ているかのように捉えているのかもしれない。
◇ 昔からサル真似というけど、
いわばその根拠が見つかった
ということになる。
ニューロンが見つかった部位は、
ヒトでいえば、言語を扱う領域に近い。
ただしヒトの脳とサルの脳は
まったく「違う」脳である。
だからサルのように
うまく真似ることができないのである。
中にはうまく真似ることができるヒトもいるが、
その場合は、脳の構造がサルに近いのではないかと
疑ってみる必要がある。
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