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ある囚人の妹に出した手紙 vol.184

 

◇ 安政二年(1855年)正月元旦。

 

萩藩の野山獄に変わった囚人がいた。

 

なんでも、ペリーの黒船に小舟でこぎ寄せ、

アメリカに密航を企てた危険人物だという。

 

ところが、元旦から、この囚人が

 

「妹に手紙を出す」 と、

 

獄中、せっせと筆を動かしている。

 

その手紙がなかなか面白い。

 

 

「新年おめでとう」というが、

 

     なぜ 新年はめでたいのか ?

 

その理由を妹に説明するのだといって、

理路整然と書いている。

 

“めでたい”  の  “め”  

目玉のことではなく、

 

木の芽、草の芽 のことである。

 

木草の芽は冬至から一日一日、

陽気が生じるにしたがって萌え出る。

 

この陽気は、物を育てる気で、

人の慈悲仁愛の心と同じ。

 

天地にも 人間にも 好ましい気だ。

 

つまり陽気が生じて、

草も木も芽がでたいと思うのが、

 

      ”おめでたい”   

 

いうということである。

 

人間の場合は、新年で、

きたない心を洗い流し、

人間本心である優しい気持ちに

戻ることが

 

「新年おめでとう」の真意である。

 

囚人はそう書いている。

 

◇ その言葉のごとく、囚人は出獄すると、

自分が春の陽気になったつもりで、

人を育てはじめた。

 

囚人の名は  吉田松陰

 

彼の教えた松下村塾からは、

高杉晋作、桂小五郎、伊藤博文らが出た。

 

彼の春風のような教えを受けて、

ほんとうに、近代日本の蠢動(しゅんどう)が

はじまったといってよい。

 

もし、吉田松陰が長生きいていたら、

明治以降の歴史が変わっていたかもしれない。

 

今日一日の人生を大切に!

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トンビ博士

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