◇ 近年、フランスのエマニュエル・トッドという
社会学者が注目されています。
トッドは、世界の「家族制度」を分類し、
家族と社会の関係を示しました。
トッドが示した家族型は以下の通りです。
1 絶対核家族
子供は成人すると独立する。
親子は独立的であり、兄弟の平等に無関心。
ーーイングランド、オランダ、フランス、
イングランド系のアメリカ、カナダ
2 平等主義的核家族
子供は成人すると独立する。
親子は独立的であり、兄弟は平等。
ーースペイン、ポルトガル、ギリシャ、
ポーランド、ラテンアメリカ
3 直系家族
子供のうち一人(一般には長男)は親元に残る。
親は子に対して権威的であり、兄弟は不平等。
ーードイツ、スウェーデン、オーストリア、
日本、朝鮮半島、台湾
4 外婚制共同体家族
息子はすべて親元に残り、大家族を作る。
親は子に対して権威的であり、兄弟は平等。
ーーロシア、フィンランド、中国、ベトナム
◇ トッドは、2000年に来日した際、
日本に対して次のように警告しました。
今日のドイツ、日本、スウェーデンは、
それぞれ非常に豊かな国であり、
高齢者が多く、大変成熟した社会です。
しかしながら、10年、20年、30年という
長期的なタームで見たときに、
日本のような社会において、
個人の安全を脅かすリベラリズム的な
状況が続いたならば、
極めて右傾化した不愉快な反応が
生み出されてもおかしくない。
◇ また、2010年の日本経済新聞の
インタビューでこのように発言しています。
日本は、非核国なのに対して、
中国は核保有国である。
日中両国は均衡が取れてない。
不均衡な関係は危険である。
実際中国は国内の不満をそらすために、
反日ナショナリズムを利用している。
中国に牽制するには、地政学的に見て、
ロシアとの関係強化が有効なのです。
なんとなく、彼の警句が当たっている
ような気がしてなりません。
◇ 彼は、家族制度・家族慣行が
その民族をつくり、あらゆる組織の
行動パターンにまで影響するといいます。
つまり、わかりやすく言うと
「家族でおきることは、
会社でも、国家でもおきる」
ということです。
◇ たとえば、
日本の大学生の多くは親から
学費を出してもらって大学へいきます。
通えれば親と同居します。
結婚して親と同居する例さえあります。
「親元と定住」の文化で、
これは江戸時代にできた家族慣行です。
室町時代の庶民には、そんな慣行はありません。
江戸以前の家意識は、大変希薄でした。
◇ アメリカ、イギリスの文化には、
日本の直系家族的な文化はありません。
たとえば、
アメリカの有名大学の大学生は
しばしば奨学金で通っています。
早いうちから家を出て、
友達と同居したりします。
もちろん、結婚後は、親と同居したりせず、
親の面倒をみる義務意識が
日本ほどは高くありません。
やはり欧米は、絶対核家族的な文化
といえるかもしれません。
そもそも、日本人とちがって、
アメリカ・イギリスでは、親と子が3人、
川の字になって同じ部屋で、
寝たりしません。
お父さんとお母さんだけが、
ダブルベットで仲良くしていて、
幼い子供は、分厚い石壁で隔てられた
真っ暗な子供部屋で、一人で寝る
場合も珍しくありません。
◇ こういった家族文化の違いは、
会社組織の中でも知らず知らずのうちに、
やっぱり出てきます。
従って親元と定住に親しむ企業文化が
以前として育まれるということになります。
なぜ、このようなことになっているのか?
やはり江戸時代から続いている
歴史的な組織文化にその源がある、
としかいいようがありません。
*今日一日の人生を大切に!